2016/04/04 9:18 AM NEWS

匿名組合の課税関係

匿名組合は原則として雑所得

現職時代、よくTKという言葉に注意しろと言われていた。TK
とは匿名組合のことで、匿名組合が絡むと租税回避が想定される
ことから、このように言われていたわけだ。

匿名組合については、国税との長い闘いの歴史がある。この点、
見直しがなされたのは平成17年度改正。

平成17年度改正では、

所得税の通達⇒原則として雑所得と明示
租税特別措置法⇒損益通算をブロックする

こんな規定が設けられた。


そもそも、匿名組合が課税上問題になるのは、それが
法人課税がなされない事業体であるからだ。

このため、外国人が匿名組合を使って事業をやり、その
分配金を国外に逃がす、といった租税回避が行われて
いた。


このようなやり方はけしからん、ということでさまざまな
ブロックをかけてきたのが現行法。しかし、ここには、
租税回避は否認するが、匿名組合を使ってビジネスをする
こと事態は禁止しない、といった制度の利用を後押しする
考え方がない。

ひとえに、匿名組合などの、いわゆるパススルー事業体に
ついて、合理的な課税制度を作れないからだ。



このような事業体について、例えば信託などを見ていくと、
以下のようなケースでどう課税するか、実は分かっていない。

1 賃貸不動産を信託する
2 賃貸不動産の受益権を、賃貸不動産そのもの(元本受益権)と
賃料(収益受益権)に分ける
3 元本受益権は長男、収益受益権は次男とする

信託は受益者課税という結論があり、受益者が信託財産を持っている
という課税関係になるとされているが、その中身を分けた場合、
2分の1で見るのか、はたまたキャピタルゲインは長男、インカム
ゲインは次男と、建前の通りに分けていいのか、実は分からない。


匿名組合についても、出資金と、出資に伴うインカムゲインである
匿名組合分配金が比例しないことも契約で可能と言われている。
となると、税の考え方としては、以下のような懸念が出てくる。

1 出資に応じて少ない分配金しか貰わない出資者は、
多く分配金を貰う出資者に対して寄附等したと捉えられないか
2 多く分配金を貰う出資者は、匿名組合に損失が生じた場合、
多くの損失を取れることになるが、租税回避にならないか

このような解決が実は図られていない。ざっと見るだけでも、
匿名組合の出資者の計算は複雑になるはずであるが、簡単な
計算方法しか書いていない通達しか、税の基準としては存在
しない。


となれば、課税する現場でも、金額が小さければ無視、大きければ
エイやで課税するに決まっている。この現場の声だけを拾い、
損益通算は認めませんよ、では到底納得できる話ではない。


なお、平成17年度改正前の通達では、匿名組合の分配金は
原則として雑所得ではなかった模様。このため、例えば不動産
を使った匿名組合では、組合員は損益通算をしていたようだ。

それをけしからん、と更正を打つのが国税。裁判所はその処分を
認めたようだ。通達は法律ではないので、拘束されず再度法律で
見直すと雑になる、といった判断を裁判所はした模様。


通達でルールを決めると、国税の裁量でどうにでもなるから
困ったものだ。






ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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