2014/04/04 11:28 AM NEWS

円換算と所得税・法人税

外貨は期末円換算する

 
法人税の世界では非常に常識的なところだけど、
所得税は趣が少し異なる。所得税においては、
外貨を保有したままではでは、基本的に所得が
実現することはない、とされているのだ。

例えば、以下のような法令がある。
所得税法167条の6(先物外国為替契約により発生時の外国通貨の
円換算額を確定させた外貨建資産・負債の換算等)の2項

外国通貨で表示された預貯金を受け入れる銀行その他の金融機関
(以下この項において「金融機関」という。)を相手方とする
当該預貯金に関する契約に基づき預入が行われる当該預貯金の
元本に係る金銭により引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で
行われる預貯金の預入は、法第五十七条の三第一項に規定する
外貨建取引に該当しないものとする。

同一通貨、同一金融機関への外貨預金の預け入れは、
為替差損益の対象とはならない、としている。同じ外貨を
持ち続けていると同視できるから、所得を認識しないのが
所得税なのだ。

方や法人税は、このような規定は存在しない。
となると、「外国通貨で支払が行われる~金銭の貸付け
~その他の取引」(法法61の8①)として、為替差損益を認識
する、と結論付けられる考えられる。


所得税と法人税は、同じ「所得」を課税客体とするが、
その内容はこのように異なっている。このような差異は、
ひとえに、執行可能性という便宜から設けられていると
思われる。

法人と異なり、個人は基本的に帳簿をつけないし、
サラリーマンが資産運用の一環で外貨建取引を行う場合は
なおさらだろう。

加えて、法人税は会計学の影響を大きく受けている。
会計学上、為替差損益は広く認識すべき、とされているが、
会計知識のない一般の方からすれば、為替差損益を
広く認識する、という結論にはならない。あくまで、本当に
実現したものだけが所得になる、と考えるだろう。

困ったことに、税理士は法人税中心なので、その頭でいると
間違えることがある。所得税と法人税の違いも念頭において、
処理を行わなければならない。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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