2014/04/14 10:03 AM NEWS

減価償却費と法人税法

固定資産売却の際、売却時までは

償却費を計上する

前回に引き続き、これも簿記の常識的なところ。会計学においては、
適正な科目に基づいた損益計算が必要であるため、利益としては
変わらない場合でも、固定資産売却損益と減価償却費はこのような
形で分けましょう、とされている。

ここで問題になるのは、法人税の取扱い。

法人税法31条(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)1項

内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその
償却費として第二十二条第三項(各事業年度の損金の額に算入する金額)の
規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、
その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額
(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、その取得をした日
及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が
毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の
方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法
(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に
基づき政令で定めるところにより計算した金額(次項において「償却限度額」という。)
に達するまでの金額とする。

注目いただきたいのは、事業年度終了の日において有する減価償却資産に
対して減価償却費が計上できる、という点。このため、先の事例では
減価償却費を計上するのは誤りで、売却に係る原価(法法22③一)として、
認識することになるのだ。


これまた所得変わらないのでいい、と思う人がほとんどだろうが、
調査官によっては、条文を字面どおりによんで、減価償却を
否認する、といった暴挙に出る可能性もある。

この点、きちんと反論するには、

減価償却費は損金にならないが、売却に係る原価にはなる

という説明だろう。この原価については、損金経理要件もない
ため、当然に損金になるわけだ。

ただし、この問題かなり揉めたこともあるようで、聞いたところ
だと、当局に会計士協会から、減価償却費を認識しても問題ないか
質疑が上がったこともある、ということ。

この質疑において、所得は変わらないから問題ない、と回答された
ようだが、その質疑はおそらく当局の倉庫の中。こういう意味で、
正しい反論のためには、正しい法知識を用意しておく必要がある
だろう。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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