2014/04/15 10:00 AM NEWS

調査不適切事例?その1

法制化後の不適切事例の対応検討

 
T&A Masterを読み直していて、当局が法制化の不適切事例の
対応を指示している、という記事があった。

平成26年7月1日以後は改正されるものの、やはり多いのは
事前通知だ。

事前通知の不適切事例として、挙げられているのが二点。

① 経営者に連絡を取りづらかったため、税理士に全権委任したもの
② 税理士の前に経営者に連絡を取ったため、税理士から苦情を受け、
  調査を中止したもの

この点、法律的に考えてみたい。今日は①の事例について。

現行法上、当局は、「調査の実施」については必ず納税者に連絡を
回すこととしている。この根拠法は、国税通則法74条の9(納税義務者
に対する調査の事前通知等)である。

国税通則法74の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)1項
税務署長等(国税庁長官、国税局長若しくは税務署長又は税関長をいう。
以下第七十四条の十一(調査の終了の際の手続)までにおいて同じ。)は、
国税庁等又は税関の当該職員(以下同条までにおいて「当該職員」という。)
に納税義務者に対し実地の調査(税関の当該職員が行う調査にあつては、
消費税等の課税物件の保税地域からの引取り後に行うものに限る。
以下同条までにおいて同じ。)において第七十四条の二から第七十四条の六
まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査又は提示若しくは
提出の要求(以下「質問検査等」という。)を行わせる場合には、あらかじめ、
当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、
当該税務代理人を含む。)に対し、その旨及び次に掲げる事項を
通知するものとする。


当該納税義務者に通知する、というわけだから、
経営者に連絡する必要がある、と主張している。

その経営者が信頼する税理士に通知して何が悪い、
という常識はあるものの、法律がこうなっている以上、
税理士としても抗議が難しいこともあり、税理士にのみ
連絡する、という税制改正が実現したわけだ。

こういうわけで、経営者に必ず連絡することになるが、
困ったことに、経営者は忙しいから、なかなか連絡が
取れない。このため、税理士に委任した、というのが
不適切事例となっているのだ。

これに対し、当局の指示は「相当の努力をしても、
無理なら無予告調査を視野にいれろ」というもの。

無予告調査って。無予告調査は、法制化を受けて
「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等
又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に
関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある
と認める場合」にOKとされた。

まじめな納税者に連絡がとれない、というケースが
これに当たらないことは明白だろう。

こういう、馬鹿げた指示が意味をなさなくなるわけで、
当局にとっても税理士にとっても、冒頭の改正は望ましい。




ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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