2014/05/15 10:00 AM NEWS

どうしても解釈できない措令39の12⑧ハ~その1~

おかしすぎて読めない条文

 
というのが税法には存在する。役員給与税制はその典型だが、
最近国際税務を研究していることもあり、敢えてそちらから
抜粋したい。

国際税務を語る上で、避けて通れないのが移転価格税制。
移転価格税制では、独立企業間価格というものを計算する
必要があるが、そのほとんどは残余利益分割法という方法だ。

驚くべきことに、平成23年度改正まで、この方法は通達にしか
規定がなかったもの。過去の通達を見ると、このように書かれてある。

旧措通66の4(4)-5(残余利益分割法)
利益分割法の適用に当たり、法人又は国外関連者が重要な無形資産を有する場合には、
分割対象利益のうち重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益に
相当する金額を当該法人及び国外関連者それぞれに配分し、当該配分した金額の残額を
当該法人又は国外関連者が有する当該重要な無形資産の価値に応じて、合理的に配分する
方法により独立企業間価格を算定することができる。

これは単純明快。無形資産という重要なファクターがある場合には、その
影響を別途考慮するため、そうでない利益を案分し、その残額を
無形資産の影響がある利益として、その価額で按分しよう、という意味だ。

平成23年度改正は、これを法律というテーブルに乗っける、という
改正が実現されたが、非常に難解な規定になっている。


残余利益分割法は、租税特別措置法施行令で、
下記のとおりとなった。
措令39の12(国外関連者との取引に係る課税の特例)⑧一ハ 

(1)及び(2)に掲げる金額につき当該法人及び当該国外関連者ごとに合計した
金額がこれらの者に帰属するものとして計算する方法
(1) 当該国外関連取引に係る棚卸資産の当該法人及び当該国外関連者による販売等に係る所得が、
当該棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産の非関連者による販売等((1)において「比較対象取引」という。)
に係る第六項、前項又は次号から第五号までに規定する必要な調整を加えないものとした場合のこれらの
規定による割合(当該比較対象取引と当該国外関連取引に係る棚卸資産の当該法人及び当該国外関連者に
よる販売等とが当事者の果たす機能その他において差異がある場合には、その差異(当該棚卸資産の販売等に
関し当該法人及び当該国外関連者に独自の機能が存在することによる差異を除く。)により生ずる割合の差につき
必要な調整を加えた後の割合)に基づき当該法人及び当該国外関連者に帰属するものとして計算した金額
(2) 当該国外関連取引に係る棚卸資産の当該法人及び当該国外関連者による販売等に係る所得の金額
と(1)に掲げる金額の合計額との差額((2)において「残余利益等」という。)が、当該残余利益等の
発生に寄与した程度を推測するに足りるこれらの者が支出した費用の額、使用した固定資産の価額その他
これらの者に係る要因に応じてこれらの者に帰属するものとして計算した金額

(1)と(2)の合計額、とあり、(2)で「残余利益等」とあるため、(1)が無形資産が
絡まない利益、(2)が無形資産が絡む利益を言いたい、ということは分かる。

しかし、大いに疑問なのが、(1)と(2)の書き出しが、「当該国外関連取引に係る棚卸資産の
当該法人及び当該国外関連者による販売等に係る所得」とあるところ、これは関連法人総額としての
利益を意味する、と思われる。

となると、(2)で差額などというが、これは発生しないのでは?と
思われ一見すると混乱するのがこの条文なのだ。

(長くなったので以下次回)



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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