2014/10/06 10:00 AM NEWS

過大役員給与は事業年度ベースか

役員報酬の減額と役員賞与の増額

 
よく質問を受けることなのだが、社会保険料の削減の意味を
兼ねて、月額ベースの役員報酬を減らし、事前確定届出給与の
適用がある役員賞与を大きくする、という節約術が
広く知られている。

この点、専門誌でも問題提起されていたが、役員賞与のみを
取り上げて「過大役員給与」となるか、もしくは事業年度
全体の役員給与の支給額で判断するのか、疑問も大きいところ
である。

従来、月100万円を12回払いしていた会社が、社会保険料の
削減のため、月8万円で残りの1,104万円を賞与で貰うことを
考えてみよう。事業年度ベースで見ると支給額は変わらないが、
おかしいことには変わりがない。このため、本当に事業年度
ベースでいいのか、疑問が生ずるわけだ。

法令を読むと、以下の定めがある。

法人税法34条(役員給与の損金不算入)2項
内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の
規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な
部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の
各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

法人税法施行令70条(過大な役員給与の額)1項
法第三十四条第二項 (役員給与の損金不算入)に規定する
政令で定める金額は、次に掲げる金額の合計額とする。
一  次に掲げる金額のうちいずれか多い金額
 イ 内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与~の額~が、
  当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の
  支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が
  類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に
  対する対価として相当であると認められる金額を超える場合における
  その超える部分の金額(以下略)
 ロ 省略
二 省略



この条文を見ると、「各事業年度」において支給した給与が
問題になるわけだから、事業年度ベースで過大役員給与を
判断すればいい、と考えられないこともない。

加えて、法人税にしても所得税にしても、期間税なのだから、
その期間における所得計算が問題になるはず。となれば、
事業年度ベースで見て何が悪い、と思われる方も多いだろう。

しかし、役員賞与のみが突出して大きい、という事態に
不自然さを覚えない人はいないだろう。「使用人に対する
給与の支給の状況」も考慮すべき事情なのだから、使用人の
賞与のベース(例えば、月給の4倍とか)に照らした場合、
役員の賞与ベースがこの計算式を著しく超える、となると
否認の俎上に上がってきそうだ。

もちろん、最終的には租税回避意図なども含めて
判断される話ではあるが、一つ言っておきたいことは、
税務調査の端緒は、不自然さからスタートする、ということ
である。

賞与のみ突出して大きい、という事情を調査官は
不自然と思えば、何とかしたいと思うはずで、
そうなった場合十分に戦えるのか、
対応は慎重にした方がいいだろう。




ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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