2015/03/02 9:42 AM NEWS

財産債務調書は要件加重

財産債務明細書が財産債務調書に

 
平成27年度改正の重要項目であるが、財産債務明細書が調書化される。
明細書は参考資料だが、調書は課税の公平を担保するためのもので
あり、重さは全く異なる。

この点、改正の趣旨として、明細書だと提出の実効性がないことが
挙げられている。国外財産調書のように、加算税のインセンティブ等を
設けて、課税逃れをブロックすることを後押ししよう、という
ことになったのだ。

先般出された改正法の要綱案を見ると、この点
下記の記述がある。

所得税の確定申告書を提出すべき者は、その年分の総所得金額及び山林所
得金額の合計額が 2,000 万円を超え、かつ、その年の 12 月 31 日においてその
価額の合計額が3億円以上の財産又は1億円以上の国外転出特例対象財産を有
する場合には、その財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要な
事項を記載した調書(以下「財産債務調書」という。)を、翌年の3月 15 日ま- 39 -
でに、所轄税務署長に提出しなければならない。

注目いただきたいのは、「2000万円を超え、かつ」という仕組み。
この点、おかしいと思うのは私だけではないと考える。




現行の提出基準である「その年分の所得金額が2千万円超であること」に加え、
「その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が3億円以上であること、
または、同日において有する国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の対象資産の
価額の合計額が1億円以上であること」を提出基準とする。

上記は平成27年度改正大綱の記述。現行の提出基準に加えるのだから、
「2000万円を超え、または」とすべきだろう、趣旨としても、現行の
提出状況が芳しくないことに触れられているところ、現行よりも
提出要件を厳しくすることはおかしい気がする。

そもそも、要綱案のように改正するのであれば、
「2000万円超であること」に代えて、と前置きすべきである。

このあたり、政治的な圧力があったとしか思えないが、
本当のところはどうなのだろうか。大綱は法律でない
と言ってしまえばそれまでだが、これは予見可能性を
高める上で必要不可欠な資料であり、その内容から
読めない制度設計は望ましいものではないだろう。

しかも、この改正、「内国税の適正な課税の確保を図るための
国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の
改正で対応される模様である。

この法律の一条、下記の通りだけど国内の財産等に
ついても適用していいのだろうか。

第一条(目的)  この法律は、納税義務者の外国為替その他の
対外取引及び国外にある資産の国税当局による把握に資するため、
国外送金等に係る調書の提出等に関する制度を整備し、もって所得税、
法人税、相続税その他の内国税の適正な課税の確保を図ることを目的とする。

要綱案では触れられていないが、この目的も変えるのだろうか。
きちんと法案を検討しなければ、と思う。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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