2015/06/15 8:41 AM NEWS

電子商取引の改正と遡及立法

電子商取引の消費税改正

平成27年度改正の目玉である本改正につき、
国税がQ&Aを公表している。

国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A

内容をざっくりと見たところ、すぐに押さえて
置くべきことのひとつに、インターネットを介して
行う英会話教室の取扱いがある(問2)。

現状、外国からスカイプ英会話等の
サービスを受けても課税されないが、今後は
課税されることになる。本件、アプリや
コンテンツのダウンロードを想定していたが、
それに留まらず「役務の提供」にあたる
英会話教室というものも課税対象になる
わけで、対応が必要になるところ。

この改正、実は非常にとらえどころが
見えない改正でもある。その理由は、時代錯誤
もはなはだしい日本の消費税は、インボイスや
事業者番号がないため、妥協の産物でしか
制度を作れないからだ。

このため、課税売上割合が95%以上の事業者は、
本制度の適用が当分の間ないなど、経過措置で
本制度の本旨を踏みにじる形でとりあえず
法律化した、というのが正直なところだろう。

経過措置は、やろうと思えばすぐにでも廃案とできる
ものだから、法律さえ用意しておけば後はどうにでも
なる、という立案者の腹積もりが見える。

特に、問題となる経過措置は、本Q&Aの問16だ。

新消費税法適用日(平成27年10月1日)を含む
課税期間において、旧法に基づいて判断した場合に
事業者免税点制度の適用がある事業者については、
あらためて、新消費税法がその基準期間又は特定期間の
初日から施行されていたもの~として課税売上高を計算し、
その計算の結果、当該課税売上高が1,000万円を
超えている場合には、平成27年10月1日以後は
事業者免税点制度の適用はありません(改正法附則36①)。

簡単に言えば、平成27年10月1日以後は、
旧法ベースではなく、新法ベースで納税義務を
判断する、という経過措置である。

国外事業者が問題になるケースだから、立案者は
あまりインパクトがないと思っているのかも
しれないが、二年後の納税義務を踏まえずに
事業展開する事業者はいない。このため、
例えば9月決算法人は、平成26年9月期の
実績で1千万円に満たない課税売上を計上していれば、
平成28年9月期は免税、という頭でいるはずで、
それを経過措置で逆転させるのはいかがなものか。

加えて、事業者免税点の考え方としては、
小規模事業者の負担を軽減させることにあり、
小規模事業者の判断として、売上ではなく
課税売上を基礎とする、という仕組みになっている。

このため、数億円の売上がある医療法人でも、
自由診療が極めて少なく、基準期間の課税売上が
1千万円未満なら納税義務は課されない。

となれば、消費税がかからない売上を基礎に
納税義務を判断するこの経過措置は
妥当性を欠く、と考えている。

改正税法のすべてに、どんな言い訳が
書かれているか、もしくは何も書かず
スルーするのか、今から楽しみだ。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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