2015/07/06 10:28 AM NEWS
文書化が大きく改正
移転価格税制の文書化
移転価格課税において、文書化(ドキュメンテーションルール) は非常に重要とされている。日本においても、平成22年度改正で 法制化され、相応の文書化が要請されているところ。 BEPS問題への対応が国際課税の近喫の課題となっているが、 文書化についても、OECDの行動計画13において、 大きく変わることが予定されている。 具体的には、以下のような3種類の書類の国税当局への 報告が要請されることになる模様だ。 ① マスターファイル ② ローカルファイル ③ 国別報告書 ①と③は親会社が作成、②は親会社と子会社の両方が 作成することとなっており、③は親会社が作成した 情報を、自動的情報交換により子会社等の所在地国 の当局に流す、という方向性が示されている。
当然ながら問題になるのは記載内容。先般、国税の 担当者のセミナーを受けたところ、下記のような 情報を記載するようだ。 ① マスターファイル グループの組織図、事業概要、無形資産の情報、 グループ全体の財務及び納税状況 etc ② ローカルファイル (おそらく法人単体の)組織図、経営戦略、 主要な競合他社、主要なTP取引等、ALP 算定根拠、財務諸表 etc ③ 国別報告書 (所在地国ベースにまとめた)収入等の財務情報、 従業員数、主要事業 etc あくまでイメージだが、現状の文書化を発展させた のが②であり、その補完情報としてグループ会社 ベースで情報を提供させるのが①、国ベースにまとめ 直したものが③、という感じである。 このような情報を提供させることからも、移転価格税制は 取引価格を問題にするのではなく、国別の所得配分を 問題にするという制度であることが理解できる。となれば、 本来的には納税者に追徴するのではなく、国ごとに交渉して、 過大に納税した国から税金を取り返す、といった対応が 望ましい気がする。 あくまでもOECDの提言であるところ、わが国では 法制化が必要になるが、BEPS対策は世界的コン センサスに基づくため、99%は法制化されると 思った方が無難だろう。 ただし、ここまでの情報提供を求められるとなると、 相当の手間になるし、そもそも多国籍企業を前提と していることから、対象は必然的に相当の規模が ある大企業に限定されると解される。このため、 中小はほとんど関係がない、という結論にも なりそうだ。 なお、様式についても基本は国内法で定められるが、 ①と②は別途、③が各国と情報共有するので OECDが世界共通の様式を作る、という うわさがある。
税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中。
@yo_mazs
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