2015/07/21 9:13 AM NEWS

LPSの法人該当性

デラウェア州のLPSは法人に当たる

下級審ではいろいろもめていた法人該当性、
最高裁でこの旨判断がなされたようだ。

10年くらい前、LLCが法人かどうかで
もめたことがあり、うんざりしていたので
こういうトラブルはない、と思いきや
今度は最高裁まで揉めに揉めている。
この問題、実は簡単に結論付けられる
話で、

法人格の有無

だけが問題になると考える。法人税は、
法人格の有無だけを持って法人税課税の
対象としていることに異論はない。となれば、
ここだけチェックすれば簡単な問題と
思うのだが、なぜか揉める。

最高裁に先立つ高等裁判所も、「本件LPSの
法人該当性は、その準拠法である米国デラウェア
州法上、本件LPSに法人格を付与する旨を規定
しているかどうかで判断することとなる」としている
わけで、ここに注目して判断すればいいはずだ。

にもかかわらず、①構成員の個人財産とは区別された
独自財産を有するか,②独立した権利義務の帰属主体と
なり得るか,③訴訟の当事者となり得るかといった点を
満たしているのであれば,我が国における外国法人等
に該当すると判断すべき、などという主張がなされる。

あるときは法人、あるときは組合、的な話があるからこそ
こんなわけの分からないロジックが出てくるのだろうが、
いずれかの局面において法人格あり、という取扱いが
あれば、それは法人となるという結論で差し支えないはずだ。


こういうシンプルな整理で足りるのに、今に至るまで
いろいろな議論が出るのは、法人税の解釈の大前提が
誤っているからに他ならない。

非居住者にせよ、居住者にせよ、所定の要件を
満たせば日本で税金がかかる。この税金は、日本の
税法で課税するわけだから、日本の税法と同じ
前提で解釈しなければ適正な課税はできない。
だから、解釈はいつも同一でかまわない。

組合には法人格がないという理由で法人税をかけず、
組合に類似しているのに、法人格があるという理由で
法人税がかかる合同会社を見れば、法人格という
シンプルな基準で取扱いが分かれるのは明白と
思われる。

このような話をしても、誰も理解してくれないから
こそここまでこじれるのだが、一番の根本は法人格
という基準が適正公平な課税を実現するためには
不十分であることが挙げられる。

こんな形式的な基準だと、いくらでも節税できるよね、
何かおかしい、という疑問点が裁判官にも学者にも
ある。だからこそ、そのおかしな状況をクリアする
ために、自然に解釈しては駄目で、複雑に読むべき
といった解釈論が展開される。

このような解釈論ではなく、本来は制度論で解決すべき
問題。それを取り違えると、荒唐無稽な税制が構築される。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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