2015/07/27 9:42 AM NEWS

基金の課税関係

一般社団法人と基金拠出

相続税対策で今、一般社団法人が大きなブームになっている。
この骨子は、一般社団法人には出資概念がないため、
法人に財産を移転してしまえば、今後の相続税リスクは
ゼロになるというもの。

とは言え、こんなおいしい話には何らかの裏がありそうで
怖い。法律上は明確ではないが、税制改正を実現させる
ためには国税も手段を選ばず、という事態に出ることは
当然に予測される。

このため、このスキームを適用する場合には、
法律云々ではなく、仮に国税職員であれば
どういう否認をするか、ということを考えるべきである。

法律的には問題ないから、億単位の税金をとれません、
としてあきらめる調査官はほとんどいないわけで、
何とかして税金をとってやると思うはずだ。このため、
仮に否認するサイドであれば、何を考えるかが重要な
問題になる。

ここで、税金を取る側に立ったとき、非常にとりやすい
理屈が一つあったので紹介したい。それは、基金に
対する取扱いである。



一般社団法人には、出資ができないため、劣後債務として
基金を拠出できることになっている。劣後、とは
いっても借金なので、拠出する側は貸付金、一般社団
法人は債務として認識することになるはずだ。

ところが、下記のような見解が会社税務事例という
権威ある書籍にある。

一般社団法人における基金の受入れは~法人税法上、
資本等取引に該当しないので、これは受贈益として
取り扱われるものと解される。
一般社団法人の基金については、その性質をめぐつて、
従来より種々の見解が存するところであるが、課税当局に
おいては、その拠出を受けた時点で直ちに課税する
取扱いは採られていないものと理解される。

言葉は濁しているものの、受贈益課税される
解釈が提示されているのである。国税の質疑には
債務という前提で書かれたものもあるようなので
確たることは言えないが、法解釈としては、
受贈益とすべき、という思いがにじみ出ている
内容だ。

個人的にはシンプルに債務でいい、と思うものの、
何かしら税金をとってやろう、と考えるので
あれば、この解釈は大いに活用したいはず。となれば、
拠出した基金は受贈益に当たる、などといった
更正もゼロではないだろう。

じゃあ、基金は拠出しなければいいと思われた
方も多いだろうが、これは課税リスクの
一端を示したもの。甘い話には裏があるはずで、
今後大きな裁判が起こりそうだ。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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