2015/08/04 1:16 PM NEWS

形式的減資で節税できるのは正しいか

吉本興業が1億円に減資

少しショッキングなニュースだが、中小企業に対する
法人税の特例の適用を目的として、吉本興業が資本金を
1億円に減資する模様だ。
減資した金額のほとんどを資本準備金に振替えるという
ことだから、実態はほとんど変わらないものの、法人税法上は
中小法人として扱われる。この点、おかしいと思う人も
多いだろう。
資本金1億円以下というのは、形式的な要件のため
やろうと思えば簡単にクリアできる問題。こんなに
簡単に、中小特例使われると安易な税逃れにつながる話で、
今まで放置してきた怠慢のつけが今後は出てきそうだ。
ところで、放置してきたのは、実質判断で中小法人を
判断する困難性はもちろんのこと、仮に実質判断する
という法律ができてしまうと、法人税法にいう「法人」
概念の見直しも必要になるからである。

実質判断を突き詰めていけば、
一人会社など、個人と変わらない法人
の問題に出くわすことは間違いない、このような法人は
実質的には個人であるため、所得税を課税すべき、という
結論になるが、そうなると執行も難しいし、このような
改正が実現すれば納税者と大きなトラブルになる。
生計一親族に対する給与や経費の支払いを制限する
所得税法56条の適用を逃れるため、所得を分散させる
ために法人化するケースは非常に多いと言われている。
この点、所得税法56条がなし崩しになっている、という
批判もあるが、特に国は何も対策をしていないところ、いきなり
実質判定します、なとど言えば相当の反発が来るだろう。
中小法人を節税に使い、実態を反映しないことが問題であれば、
一人会社の問題も避けて通れないはず。本来はここまで改正するのが
筋だが、それは非常に難しい。
我が国の法人税は、法人格という形式だけで法人税の
納税義務を判断しているから、実質判断を突き詰めていくと、
法人税の納税義務者も変える必要がある。いわゆる、
事業体課税と言われる新しい仕組みが必要になるはず。
このような仕組みを作るのは非常に難しいし、作れても
国民的な同意を得るのは非常に困難である。それであれば
先延ばしや場当たり的な対応で問題解決せざるを得ないと
結論付けられるだろう。
結果として、理論や理屈がない制度が作られるから、課税の空白や
不合理な課税が生じてしまう。
吉本興業の減資、聞く人が聞けばありえないと思うだろうが、
その根本は税制を作る側の稚拙さにある。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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