2015/08/17 9:20 AM NEWS

相続時精算課税と事後修正

相続時精算課税の落とし穴

ある税務雑誌の記事を読んでいて、なるほどと
思った相続時精算課税の取扱い。
相続時精算課税適用者が、贈与を受けた場合、
贈与税の申告が必要になるが、それを失念したり
評価の計算が誤っていた場合に、相続税に
どのように跳ね返るか、注意しておく必要がある。
相続時精算課税を適用する場合、相続時精算課税
適用財産に相続税が課税される。この相続時精算課税
適用財産と相続税の課税価格の関係は、以下の通り
規定されている。

相続税法21条の15の1項
特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した
相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの
贈与により取得した財産で第二十一条の九第三項の規定の
適用を受けるもの(~当該取得の日の属する年分の贈与税の
課税価格計算の基礎に算入されるものに限る。)の価額を
相続税の課税価格に加算した価額をもつて、相続税の課税価格
とする。
贈与税の課税価格計算の基礎に「算入された金額」ではなく、
「算入される金額」が、相続税の課税価格となることが問題になる。



「算入される金額」としているため、計算上贈与税の課税価格に
算入することになる金額が相続税の課税価格ということになる。
このため、贈与税の計算上誤りがあれば、それを是正した後の金額と
なるし、申告していなければ、申告があったものとして計算される
金額が相続税の課税価格ということになるだろう。
例えば10年ほど前に相続時精算課税に係る贈与を
受けており、その贈与税の申告をしていない場合を
例として考えてみる。10年前なので、贈与税は
時効にかかっており課税処分することはできない。
一方、相続税の申告においては、時効で贈与税が
とれないこととなった相続時精算課税の適用を受ける
財産についても、「算入される金額」はあるため、
申告が必要という結論になる。つまり、贈与税は
時効であっても、相続税の課税対象にはなるのである。
贈与と相続を完全に一本化して考えるのが相続時精算課税
なので、贈与は仮申告、という位置づけが強い。そういう意味で
相続時精算課税の贈与税は、法人税の予定納税などに
近い意味があると考えられる。
ただし、予定納税額を確定税額から控除できる法人税とは
異なり、相続時精算課税にかかる贈与税額控除は、下記のとおり
「課せられた贈与税」に限定されているため、申告もれがあれば、
ダイレクトに相続税に跳ね返ることになる。

相続税法21条の15の3項
第一項の場合において、第二十一条の九第三項の規定の適用を
受ける財産につき課せられた贈与税があるときは、相続税額から
当該贈与税の税額~に相当する金額を控除した金額をもつて、
その納付すべき相続税額とする。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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