2015/08/24 9:30 AM NEWS

所得税基本通達34-1(2)の不思議

最高裁でぼろ負けした後の通達改正

古い話であるが、はずれ馬券を必要経費としない更正処分に対し、
継続的な営利行為であるため一時所得とはならず、
はずれ馬券は必要経費算入される、という事例があった。

これを受け、パブコメを経て改正された通達が
こちら。

所基通34-1(一時所得の例示)
次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。
(2)競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等
(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)
(注)
1 馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して
独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して
長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない
網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより
多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の
実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の
払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた
所得として雑所得に該当する。
2 上記(注)1以外の場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、
一時所得に該当することに留意する。

営利目的の継続行為は一時所得にならない、と
しながら、(注2)では、(注1)以外の払戻金は
一時所得としているため、(注1)のみが営利目的の
継続行為、と国税は解釈しているとしか読めない内容。

特に、(注1)は細かいため、このくらいの
ことをやらないと外れ馬券は経費にならない、と
考えてしまうが、そうでなくとも雑所得になることは
あるはずだ。

そもそも、通達前文に照らすと、このような
内容は問題があると思う。

所得税基本通達通達全文
この所得税基本通達の制定に当たっては、従来の所得税に関する通達に
ついて全面的に検討を行ない、これを整備統合する一方、その内容面に
おいては、法令の単純な解説的留意規定はできるだけ設けないことと
するなど通達を簡素化するとともに、なるべく画一的な基準を設ける
ことを避け、個々の事案に妥当する弾力的運用を期することとした。
したがって、この通達の具体的な適用に当たっては、法令の規定の趣旨、
制度の背景のみならず条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事案に
妥当する処理を図るよう努められたい。

なるべく画一的な基準を設けない、通達を簡素化、などというものの、
上記通達の(注1)は、簡素ではないし、(注2)は、画一的な
基準と解釈できる。

このあたり、執行段階で加味してくれればいいが、
それは難しい。法律に詳しくない調査官がほとんど
だからだ。

となると、条理や社会通念をも勘案などできるわけないし、
私自身「通達の拡大解釈は絶対に許されない」と税務大学校で
指導を受けた。なお、この指導は弾力的運用、という
通達の指示と矛盾している。

このあたり、先のパブコメでは問題あり、と
指摘したのだが、特にコメントも見られなかったため、
大きな問題とは思っていないのだろう。

困ったことに、先の北海道の事案では国が
勝ったので、この細かすぎる通達が
ひとり歩きしそうな予感がする。

「馬券の購入履歴などが保存されていないため、
最高裁判決の当事者のように機械的、網羅的に
購入していたとまでは認められない」などと
判断されていることも、この細かすぎる
通達を容認する内容だ。
 



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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