2015/08/31 9:44 AM NEWS

KSKにないことは根拠とならない

納税地を所轄する税務署が更正決定

常識的過ぎて意識しないことがほとんどだが、税務調査やその
結果としての更正決定について、権限を有する行政庁は
納税地の所轄税務署長である。

このため、所轄税務署長以外の税務署長が更正決定を
すると、法令違反になり、取消しの原因となる。
この点、実務ではほとんど問題にならないが、
それが争われた事例がある(平成24年11月9日
東京地裁判決。)。

これを見ると、昭和57年に渋谷税務署に事業所
納税地の届出を出した原告について、このような
届出が出ていないため、住所地が納税地として
住所地の納税地の所轄税務署長が更正を打った
ことが違法とされている。

更正を打たれたのが平成19年6月。それまで
ずっと事務所を納税地として申告をしていたようだが、
なぜか今更住所地が納税地と国税は認定している。
結果、裁判では取り消されたのであるが、
国税の主張を見ると、なんと危険な処理を行うのか、
と言いたくなる。


仮に、昭和57年頃、本件事業所納税届出書が渋谷税務署に
提出されていたとすれば、同税務署において管理している
データ上において、これが提出された旨の入力がされている
はずであるが、同税務署のデータ上にはその旨入力されていな
かったものである。以上からすれば、原告が渋谷税務署長に対して
本件事業所納税届出書を提出した事実を認めることはできない。

耳を疑いたくなる認定の甘さである。KSKに入力がなされて
いないから、出した事実がないというが、人間にはミスが
つきものであるから、こんなの証拠でも何でもない。
それは、届出書は必ず原本を確認してから納税者に
連絡を、と指導している国税職員であれば常識である。

何より、税務調査は総合的に事実認定を行わなければ
ならないものだから、KSKという内部システムだけを
信用する、といった安易な認定は言語道断であろう。

一筆を取れなかったのか何なのか、さっぱり
意味が分からないが、納税地まで頭が回らないのが
調査官。結果、更正決定の取消し、という間抜けな
事態になる。

反面、我々としても国税を信用してはいけない。
届出書はきちんと控えを取っておかないと、

KSKに入力されていない以上、信用できません!

などといった暴挙に出るリスクは大きいからだ。

って、現職の経験を申し上げると、入力もれは
むちゃくちゃあるのだが....



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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