2015/10/12 9:36 AM NEWS

少人数私募債と税制改正

少人数私募債の節税が不可能になる

平成25年度改正で打ち出された本件の適用時期が迫っている。
少人数私募債の利子は、平成28年1月1日以後支払いを受ける
ものから、源泉分離課税から総合課税になる。

従来、少人数私募債は節税の手法として広く使われていた。
源泉分離課税のため、金額を問わず税率は20%となるからだ。
法人税減税の必要性から、所得税の増税が必要になるため
実現したのが本改正。

改正としては、仕方がないと判断できるが、正しくないのは
そのやり方。ご存知の方も多いと思うが、25年度改正では
平成28年1月1日以後発行するもの、に適用するとしており、
26年度改正においては、平成28年1月1日以後支払いを
受けるもの、と後出しじゃんけん的に適用関係を変えた、
という経緯がある。

25年度改正時、発行ベースだから今のうちに発行せよ、
と広く言われたもの。発行した会社も少なくはないと
思うが、それを1年で変えるというあり得ない改正が
なされている。

遡及立法だろ、と言いたくなる内容だった。


このような方針変更がなされた理由を見ると、
以下の指摘がある。

平成26年度改正税法のすべて169~170頁
しかし~平成27年12月31日以前に発行された
公社債については、同族会社の社債も含め、その利子が
一律20%源泉分離課税の対象となる特定公社債として
位置付けられていたため、この点に着目して、平成27
年12月までに同族会社が駆け込みで社債の発行をしよう
とする動きがみられました。このような行為の誘発は
税制の中立性の観点から望ましいものではないため、
平成27年12月31日以前に発行された同族会社の
特定公社債以外の社債の利子でその同族会社の役員等が支払を
受けるものについても、すべて総合課税の対象とすることと
されました。

一見するともっともなことを書いているが騙されては
いけない。矛盾する内容が書かれてある。

1 法律を悪用するのはけしからん、としているが、
それを是正するための改正が25年度であった。
悪用される法律を作る意味が分からない
2 発行ベースで経過措置を決めれば、駆け込み
発行することは自明の理である
3 自明の理であるのに、25年度改正で措置
しなかったのはあり得ない

こういう理屈になるのに、最もらしく書いているのは、
実は単純な理屈。

平成27年12月31日以前に発行された公社債については、
同族会社の社債も含め、その利子が一律20%源泉分離課税の
対象となる特定公社債として位置付けられていた

とあるが、何のことはない、特定公社債の範囲の検討を
怠り、当初想定していた適用関係をミスった、という
ことなのだ。

発行ベースでいい、としている以上金と時間を
かけて少人数私募債を発行した会社の信頼を何だと
思っているのだろう。間違えましたすいません、
と真摯に謝るなら別途、駆け込み発行をするとは
税の中立性から問題があると断じ、責任転嫁を
している。

こんなダサい法律しか作れないのに、その
ダサさを認めないのが、日本の税制だ。






ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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