2015/10/31 10:03 AM NEWS

調査の違法性と承継

税務調査の違法性は原則課税処分に影響しない

違法性の承継という議題が、行政法では問題になる。
先行する行政処分の違法性が、後続する行政処分に
引き継がれるか、という話。

原則として、先行行為の違法は後続行為に承継されない
とされており、よほど酷な結果があれば、例外的な判断も
なされる、といった整理を個人的にはしている。
税務調査では、税務調査の違法性が更正処分などに
影響するか、これが問題になるわけだ。

威圧誘導などという、違法極まりない川崎汽船事件についても、
税務調査の違法性は引き継がれない、と判断している。
違法性を引き継がれれば、法律も知らない素人集団である
国税職員としては、税務調査ができないという本音を
くみ取ったかもしれないが。

このような整理の延長かどうなのか、先の裁決事例で
以下のような判断がなされている。

平成27年3月26日裁決
更正に基づき過少申告加算税の賦課決定処分が行われた場合
及び決定に基づき無申告加算税の賦課決定処分が行われた場合
においては、当該更正及び決定は「調査により」行わなければ
ならないことから、仮に、調査手続に重大な違法があり調査が
無いに等しいと評価された場合には、更正及び決定の取消事由
となり、それらに基づき行われた賦課決定処分も取り消されることとなる。
他方、修正申告及び期限後申告は、税務署長の調査の有無にかかわらず、
納税者が自己の意思により行うものであって、更正や決定と異なり、
調査が要件になっているものではない。したがって、修正申告又は
期限後申告が課税庁の調査を受けてなされた場合であっても、
当該調査の手続上の違法があることのみを理由に、その申告が無効に
なることはなく、当該申告に基づき行われた過少申告加算税又は
無申告加算税の賦課決定処分が取り消されることもないと解すべきである。

一見すると、調査の違法性は承継されませんよ、と言っているが、
更正決定と修正申告等を分けていることに注目したい。



更正決定⇒調査により行われる⇒調査の違法性が明確
であれば、違法足り得る
修正申告等⇒調査ではなく任意⇒調査は前提とならない
⇒調査の違法性はそもそも承継されない

こういう整理がなされているのだが、
ちょっと頭を使えばわかるように、修正申告なんか
出してはだめだ、と結論付けられるだろう。

違法調査もすべて許されてしまうことになるからだ。

となった場合、困るのは大勢の調査官。修正申告とれない
といった事例が増えてしまうだろう。

この裁決、公開しているので、国税としては、

違法的なことやっても、承継はない

ということを言いたいのかも知れないが、

違法的なことやられれば、修正申告するな

としか読めない話であり、公開した意味が
いまいち理解できない。

国税の圧力や、反面調査の脅しをかければ、
修正申告とることは難しくない、とでも
考えているのだろうか。

それなら、情けない限りだと思う。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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