2016/03/17 12:23 PM NEWS

行為計算否認の考え方

行為計算否認は法律を作る側を想定する

税には、行為計算否認規定という強硬的な制度がある。
ごく簡単に言えば、法律上は問題ない節税でも、行き過ぎ
という場合には税務署の権限で否認できるという規定。

簡単に言うとこうなるが、実務はそうは回らない。何を以て
行き過ぎた節税になるのか、不明確極まりない。


こういうわけで、学者が判例を見ながらいろいろと指摘しているけど、
根本的な部分は分からない。根本的な部分が分からないから、
どのような場合に否認されるのか、理解できない。

そもそも、この規定は行き過ぎた節税を否認する、という理解は
正確ではないと考えている。重要なことは、そのような節税を、
法律を作る側が想定していたかどうかである。
想定できるような課税逃れについては、きちんと法律に書く。
寄附金課税や移転価格税制はその典型だろう。

一方で、想定できなかった課税逃れについては、それを許せるか
どうか、社会常識に照らして判断することになる。

ここで重要な基準は、以下の二つ。

1 当然に想定できるものかどうか
2 法律に書くことができるかどうか

1について。想定できる課税逃れについて法律に書いていない。
これは国の怠慢であり、納税者に非はない。

例えば、法人税ではないけど事業者免税点。二年前の売上が
1千万円以下なら消費税がかからない。こんな法律があれば、

二年で別会社を作る
免税となる会社に外注費を払い、節税する

こんなことは誰でも思いつくこと。それがまずいなら、
きちんと条文に書くべきだ。

2について。法律を書く場合、複雑な取引を防止するための
条文は非常に書きにくい。複雑な取引であるため、それを
否認するための要件もたくさん書かなければならないからだ。

こうなると、条文の文字数が膨大になるし、否認規定が適用
されないか、逐一確認しながら処理する必要があるため納税者
も困ることになる。


一方で、シンプルな取引を防止するための条文は書きやすい。
時価で取引しなければならないとか、役員報酬を払いすぎては
いけないとか、こういうものは簡単に条文に書ける。


つまり、条文を書く側の気持ちになって課税逃れを考えると
いうこと。この気持ちを判断するのは、法律ができた趣旨を
見るよりほかにない。








ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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