2017/02/17 4:03 PM NEWS

税務会計委託料が必要経費にならないわけがない

同族会社への支払いは否認対象

不動産所得者に多い話であるが、オーナーが節税を兼ねて会社を作り、
その会社に経費を支払うことがある。

一番の典型はサブリースであり、サブリースによる管理会社を同族会社
として設立して、そこに管理料を支払う。これは非常に多い話であるが、
同族会社に実態がなければ、管理料は必要経費にならないとされる。


この点、非常に常識的であるが、実際のところ実務で否認されることは
少ない。それは、この取引を否認する方策としては、

同族会社の行為計算否認

にならざるを得ないからだ。会社に実態があるかどうか、非常に微妙な
話になるし、法人格によって納税義務を規定している時代遅れな法制度
を採用する我が国の法制上、法人格があることは無視できない。結果として、
経費として支払うことが安易な税負担軽減の結果になる、という理屈で
否認するという結論になる。



言うまでもなく、問題になるのは同族会社の行為計算否認の適用の
ハードルである。安易に適用すると強硬的になるため、おいそれと
適用することは国税としても難しい。結果として、金額にもよるが
通ることは非常に多い。

しかし、この取扱いについて新機軸が打ち出されようとしている。
これが通れば、今後の実務は大きな見直しが必要になる。



その基軸とは、平成27年11月4日裁決(TAINS J101-2-05)。
ここでは、同族会社に支払った会計税務委託料について、以下と判断されている。

-------
本件会計税務委託契約は複数の委託業務を含むものであるところ、本件会計税務
委託料のうち請求人の青色申告のための各種資料の作成業務、税務署長への申告
書提出のための作業業務及び税務調査対応作業業務に対応する部分については、
その内容に鑑み、所得税法第45条第1項第2号の規定により必要経費に算入
されない所得税に関するものであるから、本件会計税務委託料は家事上の経費に
関連する経費に当たる。
------

注目したいのは、

会計税務委託料は所得税の計算で必要になる
→ 所得税は個人の不動産所得の計算上、必要経費にならない
→ 必要経費にならない支出のためにお金を使うのは、
ビジネスとは言えない
→ ビジネスでない以上、経費にならない

こんな、乱暴な理屈が展開されていることだ。こんな理屈が通れば、
申告にだれもお金は使わないし、税理士報酬を必要経費にすることも
できないという結論になるだろう。


この裁決であるが、某税務雑誌に掲載され、大きな反響を呼んでいると
聞く。しかし、それ以上に注目したいのは、この裁決が公表される前から、
国税内部では話題になっていた模様であること。


ろくに勉強しない国税組織も注目しているのは、このロジックが通れば
税理士報酬も必要経費の否認ができることになるからに他ならない。


もちろん、こんなバカな話はないと思っているので、国税組織もこれ以上の
愚行を起こさぬよう、慎重な対応を期待したい。




 



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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