2017/09/11 10:29 AM NEWS

佐川長官の何が問題か

就任会見もしない国税庁長官

公の場に姿を見せない、佐川長官の問題がクローズアップされて長い。
報道レベルであるが、納税者の風当たりが強く、現場は悲鳴を上げている
模様。

言うまでもなく、税務調査は事実認定の世界であり、そのためには納税者に
資料を提出させたり、事実確認のためのヒアリングを行う。これを拒否すれば
罰則の対象になる訳だから、納税者はしぶしぶ協力している。

しかし、当の国税庁長官は資料も出さなければ事実確認にも協力しない
という経歴がある訳で、そんな人間がトップになる組織に誰も協力したくない。

しかも、この人事も、どうやらさきの隠ぺい工作に対する報奨、といった側面が
あるとも言われている訳で、納税者を馬鹿にするにもほどがあるとはこのこと
だろう。

さて、上に立つ人間が矛盾した発言を繰り返すのは、今に始まったことではないが、
そもそも国税組織には強大な権力がある。このため、やろうと思えばこんな納税者の
不満を抑え込むこともできない訳ではない。

しかし、以下の記事では、納税者の不満に対し、国税職員はかなり大変な思いを
しているとのこと。その理由をちょっと考えると、国税対策について多くの示唆を
得られる。

税務署員も悲鳴 佐川長官「罷免運動」拡大で10月辞任も
強権的な税務署とはよく言われるが、税務署で働いた人間として言えるのは、
強権的な税務職員はそれほど多くないということ。

強権的な税務調査とはよく言われるが、その本質は任意調査である。加えて、
問題なく国税が使える質問検査権の行使についても、納税者の理解と協力を
得て、と指示されている。

上記の指示を理解していない職員も多いので困るのだが、国税組織は多大な
権力を持ちながら、それを行使することについては本当に慎重である。つまり、
権力があるから従った方がいいよ、として納税者サイドの協力や妥協を得て
動くのが税務行政なのである。

このため、協力や妥協を得られない合理的な理由を持たれると、国税は
非常に困る。佐川長官や、国税のアキレス腱を熟知している私などのOB税理士は
悩みの種という訳だ。

今後、佐川問題がどうなるか私には読めないが、私見としては任期満了まで務める
気がする。役人の好きな前例踏襲に該当するし、何より佐川長官はパワハラの気が
あるようで、となればパワハラ大好きな国税組織に非常にマッチした方だと
思うので。
 



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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