2017/11/28 9:22 PM NEWS

無議決権株式=配当還元方式になる訳がない

無議決権株式に転換すれば配当還元方式

何を血迷っているのか、このような質問を最近はよく受けるようになった。原則的評価
方式が適用される株式について、無議決権株式に転換すれば配当還元方式になる。とすれば、
何の苦労もなく株価を引き下げられる訳で、こんなうまい話はあり得るはずがないと思って
しまう。


このスキームであるが、金融機関などがかなり売り込んでいる模様。金融機関などが売り込んでいる
ということは、何らかの裏付けがあるはずで、その裏付けは以下の規定である。

-------
財産評価基本通達188(同族株主以外の株主等が取得した株式)

~「同族株主以外の株主等が取得した株式」は、次のいずれかに該当する株式をいい、その株式の価額は、
次項の定めによる。
(1) 同族株主のいる会社の株式のうち、同族株主以外の株主の取得した株式
 この場合における「同族株主」とは、課税時期における評価会社の株主のうち、株主の1人及びその
同族関係者~の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30%以上(その評価会社の株主のうち、
株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数が、
その会社の議決権総数の50%超である会社にあっては、50%超)である場合におけるその株主及び
その同族関係者をいう。(後略)
-------

法人税の頭で考えると違和感があるが、財産評価基本通達に基づく株価評価における同族株主は、
議決権オンリーで見ることになっている。結果として、議決権のない株式に転換すれば、同族株主に
ならないという結論が導かれる。

 
財産評価基本通達における議決権について、国税の見解は以下の通り。ズバリ、中心的な同族株主などに
ならなければ、多寡に関係なく配当還元でいいと書いてある。

-------
資産課税課情報 種類株式の評価について(情報) 平成19年3月9日
(TAINS 資産課税課情報H190309-006)

(参考) 無議決権株式を発行している場合の同族株主の判定
同族株主に該当するか否かの判定は、持株割合ではなく議決権割合により行うことから、同族株主グループに
属する株主であっても、中心的な同族株主以外の株主で議決権割合が5%未満の役員でない株主等は、無議決権
株式の所有の多寡にかかわらず同族株主に該当しないこととなるので、その株主等が所有する株式は評価通達
188-2《同族株主以外の株主等が取得した株主の評価》により配当還元方式を適用して評価することに
留意する。
-------
中心的な同族株主とは、本人、配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び1親等の姻族で25%以上の議決権を
有するグループを意味する。

この場合、中心的な同族株主以外に株を渡さないと、無議決権株式も配当還元方式ではなく、原則的評価方式で
評価せざるを得ない。しかし、中心的な同族株主以外に無議決権株式を渡すのはなかなか怖い。聞いたところに
よると、会社法上、無議決権株式であっても譲渡制限があれば、会社に買取を請求できる模様。

それなら、中心的な同族株主の制限にもならないよう、一般社団法人を作って無議決権株式を移転させれば
いいのではないか、などと言われることがある。一般社団法人は資本関係がないため、同族関係という話も出てこない。
仮にこれが通れば、99%を無議決権株式に転換して、それを一般社団法人に移転させた後、一気に配当還元を使って
評価額を下げることが出来ることになる。

もちろん、このようなうまい話はないと思うし、あってはいけない。仮にこれが通るなら、無議決権株式
に転換する段階で、(簿価繰延ではなく)譲渡認識をしなければならないはずだろう。

こういう訳で、無議決権株式にして、中心的な同族株主以外の株主に移転すれば配当還元になる、というのは常識として
そもそもおかしいと思うのだが、問題の根本は種類株式の評価について、たった3種類しか定めていない国税の怠慢にある。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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