2014/08/12 4:31 PM NEWS

KDDIの異議申立てと耐用年数省令の解釈

KDDIが異議申立て

こんなニュースが報道されている。内容を見ると、耐用年数に関する
事実認定の相違が原因であるようだ。

携帯電話のサービス提供のため全国各地に設置している鉄塔について、
毎日新聞の報道によれば、
KDDI→「電気通信事業用」(耐用年数21年)
当局  →「放送または無線通信用」(耐用年数40年?)
という解釈の相違が生じた模様。
この点、あてはめの指針としては、以下の通達によることになる。
耐用年数省令1-3-1(構築物の耐用年数の適用)
構築物については、まず、その用途により判定し、用途の特掲されていない
構築物については、その構造の異なるごとに判定する。

まず用途、というわけだが、本件においては言うまでもなく「電気通信」と
「無線通信」の差を考えればいいことになる。
この点、参考になるのは、電気通信事業法電波法である。


電気通信事業法は、電気通信を「有線、無線その他の電磁的方式により、
符号、音響又は映像を送り、伝え又は受けること」と定義し(法2一)、
「電気通信事業の公共性にかんがみ、その運営を適正かつ合理的な
ものとするとともに、その公正な競争を促進することにより、電気通信
役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者の利益を保護し、もつて
電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を
増進することを目的とする。」と趣旨が述べられている。

一方電波法によれば、その施行規則で「無線通信」を「電波を使用して行う
すべての種類の記号、信号、文言、影像、音響又は情報の送信、発射又は
受信をいう」としており(施行規則2①十五)、「この法律は、電波の公平
且つ能率的な利用を確保することによつて、公共の福祉を増進することを
目的とする。」と趣旨が述べられている。

両者の相違はパッと見て分かりにくいが、電気通信に無線通信は
含まれることは理解できる。
ここで、注目すべき規定が下記だ。

電気通信事業法2条(定義)
四 電気通信事業 電気通信役務を他人の需要に応ずるために
提供する事業(放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第百十八条
第一項に規定する放送局設備供給役務に係る事業を除く。)をいう。

私自身、このあたり詳しくないので確たることは言えないが、テレビなどの
放送まで電気通信事業法は規制していない気がする。つまり、電気通信と言えば、
無線通信には含まれるものの、電話事業などより細かい事業を意味する、
という趣旨がありそうだ。

加えて、「放送または無線通信」とある以上、放送と無線通信の
考慮の度合いは法令上は一致する。このため、放送と同等の
無線通信に対しては、この耐用年数を適用するということになろう。

しかし、電気通信と放送は言うまでもなく一線を画すから、
電気通信事業者の事業の用に供するとなると、電気通信事業用として
耐用年数省令上は取り扱うべき、と考えられる。

となると、納税者が正しいような気がするが、結論はどうなるだろう?

分からないことを審判所に丸投げ、という異議申立ては仕方がないとしても、
今後の動向に注目したいところである。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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