2014/08/25 8:38 PM NEWS

評価損の計上有無

森トラスト、400億円の申告漏れ 

 
不動産の評価損の絡みで、森トラストが更正処分を受けたという
報道がなされた。審査請求により是非を問う模様。


報道によると、

1 不動産投資会社と共同出資した不動産
2 不動産投資会社の上場廃止に伴う評価損計上
3 跡地を売却しようとした形跡がなく、販売目的の所有とは
  認められないとして当局否認

とある。これだけではよく分からないが、
個人的にはなかなか勝つのは難しいように思われる。


評価損の条文には以下の規定がある。

法人税法33条(資産の評価損の損金不算入等)2項
内国法人の有する資産につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額が
その帳簿価額を下回ることとなつたことその他の政令で定める事実が生じた場合において、
その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、
その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えを
した日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、
前項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、
損金の額に算入する。

ご覧いただくと分かる通り、評価損の要件として、

1 評価が下がった因果関係
2 その因果関係として、政令で定める事由の発

の二つがキーになる。





 
2の政令で定める事由については、法人税法施行令68条
(資産の評価損の計上ができる事実)1項に、
対象となる資産の種類ごとに個別掲記されている。

対象となる資産は、おそらく不動産開発業だから、
「棚卸資産」該当になるのだろう。となると、同項1号
で見るが、その事実として共同投資会社の上場廃止を
含むと読むことはできないと言わざるを得ない。

棚卸資産である以上、短期売買を前提に評価損計上
要因を定めているから、本件のような想定しがたい
特殊事情は排除すべきだろう。一方、固定資産や
繰延資産は、長期利用が前提だから、特殊事情の範囲を
広くとらえている。

一点、主張しやすいと思ったのが、「販売目的の所有とは
認められない」としている点。こうなると、本件不動産は
棚卸資産とは言い難いから、固定資産であることを前提に、
特殊事情を広く取り、主張を展開できるのでは、と考えた。

とは言え、共同出資会社の上場廃止と、固定資産となる
本件不動産の価値減少に因果関係ありと考えるのは
やはり難しい。共同投資会社が撤退すると、開発が
困難になるわけだから、当初の資産価値ではなく、
予測した売値が下がる、という結論になるからだ。

どういう主張を展開するのか、今後の動向に注意したい。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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