2014/09/08 10:00 AM NEWS

繰延資産課税の意味と背景

第三銀行が4億円超の申告漏れ

 
報道によると、三重県の第二地銀、第三銀行が名古屋国税局の税務調査を受け、
平成25年3月期までの2年間に法人税約4億5千万円の申告漏れを指摘されて
いた模様だ。

見解の相違があるにせよ、修正申告をしたようだが、その論点は繰延資産に該当するか
否かの模様。先の報道では、「預金管理などのシステム導入をめぐり、支払った委託料の
一部が費用と認められず、ノウハウの提供などに絡む一時金が含まれ」ていたとのこと。

税法上、ノウハウの一時金は繰延資産となる。根拠は、下記の通り。

法人税基本通達8-1-6(ノーハウの頭金等)

ノーハウの設定契約に際して支出する一時金又は頭金の費用は、令第14条第1項第6号ハ
《役務の提供を受けるための権利金等》に規定する繰延資産に該当する。ただし、
ノーハウの設定契約において、頭金の全部又は一部を使用料に充当する旨の定めがある場合
又は頭金の支払いにより一定期間は使用料を支払わない旨の定めがある場合には、当該頭金の
額のうちその使用料に充当される部分の金額又はその支払わないこととなる使用料の額に
相当する部分の金額は、これを繰延資産としないで前払費用として処理することができる。

これだけ見ると、当局の指摘が正しいように思えるが、敢えて法令に立ち返って考えてみよう。
法人税法施行令14条(繰延資産の範囲)1項
第十四条  法第二条第二十四号 (繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用
(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
六  前各号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの
 ハ 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用

常識的な話といえば話なのだが、繰延資産の要件は、

① 支出効果が1年超
② (資産ではなく)費用
③ 前払費用や取得費となるものを除く

の3つ。②に注目頂きたい。期間損益適正化の要請から
このような「費用」を敢えて「資産」としよう、とされている
わけだ。

このため、資産たるものは繰延資産とはならない。
この点から問題になるのは、本件の場合ソフトウエアだろう。
私自身、このように考えるため、先の報道を読む限り
ソフトウエア計上有無が問われるべきで、ノウハウ云々は
違うのではないか、と多少違和感がある。

この点、事実認定にもよるのだろうが、ある報道によると、
資産に計上して大部分は3年間で償却するよう指導された、
とある。

ノウハウの償却は原則5年。ただし、「契約による賃借期間が
5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の
支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間」
でいいため、この点3年でいい、とされたのだろうか。実務的には、
明らかにおかしいのだが。

自社利用のソフトウエアの場合、5年という耐用年数があるところ、
「ソフトウエア課税すると5年ですが、修正申告いただけるなら、
5年のところを特例使って3年にしますよ」といったところから
折り合いをつけた、というのが妥当な解釈であろうか。






ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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