2014/09/16 6:32 PM NEWS

適格でない理由は何か?

塩野義製薬に400億円申告漏れ指摘

 
このニュースを日経新聞などで読むが、なかなか意味が分からない。外国子会社に
JVの事業を現物出資したことが適格でないとされたようだが、なぜ適格に
ならないのか、その根拠が不明なのだ。

事案の概要を見ると、

① 英国会社とケイマン?でJV(研究開発絡みの模様)
② その英国会社から、JVの持分を売り渡すよう要請
③ 100%の英国子会社に持分を現物出資
④ 英国子会社が英国会社に譲渡し、キャピタルゲインが実現

という流れ。言うまでもなく、③は国内であれば原則適格になるが、
外国法人へ現物出資する場合、所定の国内資産の現物出資は100%関係が
あっても非適格になる。

その資産は、下記の通り定められている。

法人税法施行令4条の3(適格組織再編成における株式の保有関係等)9項
法第二条第十二号の十四に規定する国内にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債は、
国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利、鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)
の規定による鉱業権及び採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)の規定による採石権その他
国内にある事業所に属する資産(外国法人の発行済株式等の総数の百分の二十五以上の数の株式を
有する場合におけるその外国法人の株式を除く。)又は負債とし、同条第十二号の十四に規定する
国外にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債は、国外にある事業所に属する資産
(国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利、鉱業法の規定による鉱業権及び採石法
の規定による採石権を除く。)又は負債とする。

ご覧いただくと分かるが、25%以上の外国株式を外国法人に現物出資
しても適格になるわけで、こうなるとその背景が見えてこないのだ。




 
更正の背景が分からないため、確たることは言えないが、
考えられることとしては、以下の2つのポイントであろう。

① 行為計算否認規定
② JVの資産性

①だが、これは可能性が薄い。インパクトが強いため、
まず報道で大きく取り上げられると想定されるからである。

となると②だが、JVは会社、と報道では掲載されているが、
ケイマンなのでビークルが日本とは異なり、ハイブリッド事業体
とも考えられる。

この点、面白いことに有価証券の定義(法令11)を見ると、
その範囲内に匿名組合の出資がない。となると、かなり
強引だが以下の理屈が成り立つ。

JVの持分は有価証券ではない
⇒外国法人の株式ではないため、先の適用除外は
 該当しない
⇒国内にある資産とは、国内事業所の帳簿に記録している
 資産を言う(法基通1-4-12)
⇒JVは連結対象会社だったから、その点を指摘した
⇒パススルー事業体とすれば、現物出資資産は
JVの資産、すなわち研究開発に係る無形資産?
⇒国内にある無形資産を外国法人に現物出資
⇒適格ではない???

当局はこういう認定をしてきそうだ。

条文上、「採石権その他国内にある事業所に属する資産」
と規定している以上、その範囲は限定的にとらえなければ
ならないものの、法基通1-4-12は広くとらえているのが
問題だ。

このような強引な処分がなされた、と考える根拠として、
悪名高い大阪国税局が更正処分をしていることが
挙げられる。何でもアリ、というところだから。

本件、塩野義製薬は事前確認を行ったようで、その際は
OKを当局からもらった模様。到底納得できる話ではないと
主張している。

この点、JVの本質は相当調査しなければならないところ、
事前照会では分からなかった、という逃げ口上も
やってそうだ。

詳細が分かり次第、また検討したい。





ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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