2014/09/30 3:43 PM NEWS

固定資産税は台帳課税主義か?

事後的登記も固定資産税納税義務

 
先般行われた最高裁判決で、このような判断が示された模様。
前年12月に住宅を新築し、10月になってから登記した者に
対する課税が問題になったもので、地裁(自治体勝訴)、
高裁(納税者勝訴)、最高裁(自治体勝訴)と判断が
大きく分かれた模様だ。

この点、条文上には以下の定めがある。

地方税法343条(固定資産税の納税義務者等)
   固定資産税は、固定資産の所有者(質権又は百年より永い
  存続期間の定めのある地上権の 目的である土地については、
  その質権者又は地上権者とする。以下固定資産税について同様と
  する。)に課する。
2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充
 課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者(区分所有に係る家屋に
 ついては、当該家屋に係る建物の区分所有等に関する法律第二条第二項
 の区分所有者とする。以下固定資産税について同様とする。)として
 登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として
 登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき、
 若しくは所有者として登記又は登録されている法人が同日前に消滅
 しているとき、又は所有者として登記されている第三百四十八条
 第一項の者が同日前に所有者でなくなつているときは、同日に
 おいて当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。
3 第一項の所有者とは、償却資産については、償却資産課税台帳に
 所有者として登録されている者をいう。

いわゆる、台帳課税主義と言われる制度で、所有者として登録されている
者が納税義務者たる「所有者」となるわけだ。

そう考えると、最高裁や地裁の判断に疑問符がつくことは言うまでも
ない。



意図的に登記を遅らせて、固定資産税の負担を逃れる、という
話があるため、実務としては本件のようなケースに課税してきた、
と報道にはある。

しかし、台帳課税主義を取る以上、こんな事態を想定していません、
などという言い訳は通用しないわけで、それを問題とするのであれば、
条文に明記しておくべきだろう。事実、課税上の弊害が生ずる、
と思われる事態に対しては、上記の第二項において、「この場合に
おいて」として明確化している。

結果として賦課期日に登記されていないのであれば、課税はできません、
という結論になるのが自然である。

裁判においては、「固定資産税は実質的に建物を所有している人が
納めるべき性質の税で、基準日時点での登記の有無はあくまで所有者を
判断するうえでの手段にすぎず、事後的な登記であっても所有者と
確認できれば課税は許される」とあるが、それなら遡及修正が
いくらでも可能になるわけで、早期に租税債権を確定させなければ
ならない、という更正の請求を一年間しか認めてこなかった
お決まりの文句と矛盾する気がする。

何より、本件のような新築とは異なり、譲渡等があった場合を
考えると、納税者の異動を追う必要がないため、台帳課税主義は
自治体にとって実に都合がいい制度である。








ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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