2014/10/27 10:00 AM NEWS

概算経費率表なるものが存在?

郵便保険外交員、数十人が申告漏れ

 
報道によると、郵便保険の外交員が経費を水増しして、相当程度所得を
圧縮していた事実が発覚した模様。郵便局のトップは、適正申告について
指導を徹底するとコメントしている。

経費本を書いている私としては、看過できない報道なので詳細を調べて
みたが、どうにも腑に落ちない点が二点ほど見られる。それは、

① 本件外交員報酬の事業所得該当性
② 概算経費率表という謎の資料の存在

である。まず、①についてだが、本件の報酬について、とある
報道では、「郵便局員らは保険商品などの販売実績に応じ、
税務上の事業所得に当たる営業手当を受け取っており、
確定申告をする必要がある」と記されている。加えて、
「給料とは別に受け取っている営業手当」とあるため、
給与所得と事業所得を有する者、という整理が
なされることになるわけだ。

そもそも論としてだが、給与をもらっている以上、生活の資は
十分にあるわけで、それなら事業ではなく「雑」という感覚が
正しいと思われる。

加えて、同じような申告を見れば、一般的な調査官であれば、
外注費ではなく給与課税、という指導をするはず。営業手当も
雇用関係ある者に対する労務の対価である以上、それだけ取り上げて
いいのか大いに疑問がある。

実態の確認を要することは間違いないが、このあたりどうなのか?



その他、報道によると、外交員はどうやら収入の4割程度
経費としていた模様で、それが過大、ということから当局の
指導があったようだ。

この点、報道では、「国税当局は、約20年前まで外交員の事業収入に対する
経費の割合である概算経費率を40%まで認めていた。その後、税の公平性の
観点から廃止し、実費だけ認めるように切り替え、各方面に指導していた。」
とある。

20年前にこんな制度があったのか、と驚かされたが、この点調べてみると、
法律ではなく内規、のような取扱いだった模様だ。というのも、どうやら
「概算経費率の表」のような資料があった模様。納税協会の税務相談会などでは、
過去この表が使われていた、みたいな記述もある。

実費のみ、とされたとしても、このような概算経費率の表の考え方は
まだ生きているようで、概ねこのくらいまでなら、という参考値的な考え方
を指導されるケースもゼロではない模様だ。法律的にはノーだから、
といっても、今までノーなものも認めてきたんでしょ、といった
反論もできそうだ。

事業所得該当性にしても、概算経費率の表にしても、法律的には
納得しがたい実務がここにはある。いうまでもなく、郵便組織という
大きな組織と、当局の間で過去何らかの取り決めがあったと推測すべきである。

このような取り決めが幅を利かせていたことが、本件の問題の
根幹にあるような気がしてならない。












 

 

 

 

 

 

 

 



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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