2015/04/20 9:31 AM NEWS
分掌変更の退職金と未払金
分掌変更の退職金は未払不可
実務で問題になる役員退職金のうち、いわゆる実質的な
退職として経費として認められるものが分掌変更の
退職金。
この退職金については、法人税基本通達において下記の
定めがある。
法人税基本通達9-2-32(役員の分掌変更等の場合の退職給与)
法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し
退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば
次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、
その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、
実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによる
ものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。
(1)~(3) 省略
(注) 本文の「退職給与として支給した給与」には、原則として、
法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。
ご注目いただきたいのは、未払金等は含まれない、ということ。
このため、現金支給できなければ駄目だ、という原則論が
あり、この点判例でも支持されている。
ところが、未払金で経理した分掌変更に伴う役員退職金が
認められた事例があった模様。詳細は伝わっていないが、
資金繰り等の都合のため未払になったものであり、いたし方
ないという判断だったようだ。
先の通達に戻ってみよう。未払金等は駄目、となって
いるが、「原則として」という用語に注目いただきたい。
この「原則として」という用語の趣旨は、 下記のとおり述べられている。 平成19年3月13日付課法2-3ほか1課共同 「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明 退職給与は、本来「退職に因り」支給されるものであるが、本通達においては 引き続き在職する場合の一種の特例として打ち切り支給を認めているものであり、 あくまでも法人が分掌変更等により「実質的に退職したと同様の事情にあると 認められる」役員に対して支給した臨時的な給与を退職給与として認める趣旨 である。したがって、本通達の適用により退職給与とされるものは、法人が 実際に支払ったものに限られ、未払金等に計上したものは含まれないことと なるのである。 ただし、役員退職給与という性格上、その法人の資金繰り等の理由による 一時的な未払金等への計上までも排除することは適当ではないことから、 「原則として、」という文言を付しているものである(このような場合であっても、 その未払いの期間が長期にわたったり、長期間の分割支払いとなっているような 場合には本通達の適用がないことは当然であろう。)。 判例などで未払計上は駄目、としたものはあったものの、従来から、一時的な 資金繰りの都合であれば、趣旨としては問題ないとしていたのである。 このため、インパクトは大きいが、今回の判断は妥当と言えそうだ。 趣旨まで遡ると、通説と異なるものがたくさんあって勉強になる。 税務調査の交渉も同じであり、だからこそ安易な妥協は厳に慎むべきなのだ。
税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中。
@yo_mazs
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