2015/05/11 9:18 AM NEWS

第3のビールに係る酒税

「極ゼロ」酒税返還せず

報道によると、サッポロビールが発泡酒と
判断して自主納付した酒税115億円につき、
発泡酒ではなくやはり第3のビールであった
として国税に求めた還付請求が却下された
ようだ。

守秘義務の観点から、国税もサッポロビールも
却下理由も、第3のビールに該当する理由も
明らかにしていない。このため、酒税法を読んで
みたのだが、いわゆる第3のビールの要件が、
これまたよく分からない。

wikipediaによると、

原料を麦芽以外にする
発泡酒に別のアルコール飲料(大麦、小麦等を問わない麦由来のスピリッツや焼酎)を混ぜる

という手法から第三のビールになるということだが、
製造技術に関する知識がないと、そこで躓いてしまう
ことになる。事実、手法が関係する話になるため、
本件の核心を国税庁もサッポロビールも明らかに
していない。

実際のところ、国税の職員も、酒税については「販売免許」
に関する業務がほとんどであり、重要な酒類の区分については、
鑑定官という技術系の職員が担当している。

技術系の職員は一般の税務職員とは異質の存在であり、
私自身彼らの業務の詳細を知っているわけではない。

このため、なかなかコメントしづらいところなのだが、
ひとつ言えるとすれば、このような解釈しづらく、かつ
抜け道の多い法体系は問題がある、ということになる
だろう。

酒税など、課税されるものをリスト化する
方式(ポジティブリスト方式)は、抜け穴を
めぐりいたちごっこが繰り返される。

いたちごっこで終わればいいが、往々にして
見られるのが、立法を経ない横暴な「解釈変更」。
このような横暴をとめるために、税法に精通した
税理士や弁護士の力が必要になる。

しかし、法律の専門家である弁護士や税理士は
技術系とは限らないため、基本的にここには
ノータッチになり、技術に詳しい顧客任せに
ならざるを得ない。

クライアント任せになるとすれば、困るのは
税務当局との折衝。税務当局との折衝に
プロが絡まない場合、往々にしてやりくるめられて
しまう。

この点、サッポロビールも、第3のビール
に該当するという確信を得た、としながら、最終的な
判断が出るまでは、発泡酒として据え置く
方向性の模様と聞いている。万一負ければ115億円
ですまないのだから、当然の判断だろう。

国税のさじ加減で決まる感が強いので、
こんな仕組みは問題と思うのだが、おろかな
政治家は、消費税についてもこの仕組みを
採用しようとしている。

いわゆる、複数税率だ。

酒でこれだけもめるのに、消費税になれば
どれほどの混乱が生じるのか、想像に難くない。

 

 



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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