2015/05/18 10:27 AM NEWS

塩野義製薬の異議決定

JV持分の現物出資が非適格

以前、紹介した塩野義製薬の更正事案。予想されたことだが、
異議申立ては却下されたようだ。

ざっくりとだが内容を見ると、信義則違反と
国内資産の現物出資かどうかが問われた模様。
信義則については、事前照会で適格現物出資該当と
指導されるものの、問題となったJVの管理等に
つき、事前照会内容とは異なり、国内における
管理と認められる事実関係があるため、
対象外としている。

国内資産該当性に関しては、JVの持分ではなく
JVの資産が現物出資の対象資産とされた上で、
国内管理をしているので下記通達に基づき、
外国法人に対する国内資産の現物出資であり、
適格にはならないと結論付けた模様だ。

法人税基本通達1-4-12(国内にある事業所に
属する資産又は負債の判定)
令第4条の3第9項《適格現物出資の要件》に規定する
「国内にある事業所に属する資産又は負債」に該当するか
どうかは、原則として、当該資産又は負債が国内にある
事業所又は国外にある事業所のいずれの事業所の帳簿に
記帳されているかにより判定するものとする。
ただし、国外にある事業所の帳簿に記帳されている資産又は
負債であっても、実質的に国内にある事業所において経常的な
管理が行われていたと認められる資産又は負債については、
国内にある事業所に属する資産又は負債に該当することに
なるのであるから留意する。

この通達、いつ見ても違和感がある。帳簿に記帳されているか
否かでダイナミックに税負担が変わることになるが、こんな
単純な基準でいいのか、と気を病むところ。

本件においても、実はかなり強引な当てはめをしている。

① JV持分は有価証券として国内で記帳
② しかし、有価証券を出資したものではない
③ JVを構成する各種資産に対する管理は日本
だから、①と併せて国内資産と認められる
④ 加えて、JV事業を管理する国外事務所は
存在しないと認められる

任意組合を考えていただくとわかるとおり、
任意組合の税務処理は純額法でもいいため、
「有価証券」とだけ帳簿に記載されることがある。

こうなると、そもそも論として、対象となる
資産を帳簿に書く、といった事態は想定されない
と思われる。この点、異議決定においても、
どう「国内資産」と結論付けるか、苦労した痕跡が
見られる。

上記の通達は、こういうわけで安易だ、と思うしだい
だが、その趣旨は下記のとおりの解説。

逐条照会法人税関係通達総覧151頁
一般に法人が有する資産又は負債については、
その資産又は負債を形状的に管理している
事業所の帳簿において記帳されていることが
通常であろう

ネット社会だと、国内で国外の資産を
管理することもできるだろうから、こんな
規定は意味がないと思う。むしろ、所在場所
を厳密に考慮するのが通例だろう。

それに、国内資産を外国法人に現物出資した
場合には、税収の確保のためにキャピタルゲイン
に課税しなければならないから適格には
ならない、とされるわけで、それなら
帳簿などという形式基準にこだわってはいけない。







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松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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