2015/05/25 9:15 AM NEWS

寄附金課税される場合の国税の考え方

取引当事者間の真の合意価格を認定する

寄附金課税について、単に時価と対価の差額を確認するのではなく、
このような手法も容認される、といった趣旨の記述が税務雑誌に
見られた。著者はOB税理士なので、国税はこのような課税を
行うということだろう。
真の合意価格を認定する、というが、これは本来合意した金額より
も少ない金額で取引した場合、その差額分相手に贈与した、と事実認定
できることもあるからだろう。取引直前になって、値引きすることも
あるが、通常の値引きは寄附金課税されないから、取引相手への利益供与、
と評価できる事実が必要になることは間違いない。
この点、国税は極めて安易に事実認定することがあり、往々にして
納税者はやりくるめられてしまうので注意したいところだ。
例えば、過去の裁決例を見ると、特定時点で修正することを予定して
いる暫定価格ベースでの取引を期中で行い、決算段階で修正をかけた
取引について、暫定価格が時価であり、修正した価格はそれよりも
低いから、差額は寄附金に当たる、として更正されたものがある。
材料の市況の関係もあるため、暫定価格で取引することは実務でも
ありうることと思うので、何故暫定価格が時価になるのかさっぱり
不明だが、このようなおろかな更正処分が行われるのは、ひとえに
「時価の立証」が面倒くさいから他ならない。


この税務雑誌でも指摘されているが、「時価の算定が困難なので、
真の合意価格を認定することになる」といった趣旨の記述がある。
一見するとごもっとも、と思われるが、納税者にとってみれば
ふざけるな、と言いたくなる。
相続税の財産評価、国外財産調書の見積価額、そして法人税の取引価格
にしても、納税者は悩みながら時価の算定をしている。この点、法律で
時価で取引、と定められているからだ。
にもかかわらず、国税だけ時価算定が困難だから、真の合意価格
で問題ない、などとよく言えたものだと思う。このような考え方
が発展すると、先のようなおろかな更正処分につながるわけだ。
なお、真の合意価格よりも低い価格で取引した、差額は利益供与
したとなると、「事実の仮装」にも当たると思われるが、この点
重加算税の対象にせざるを得ないと思う。
このような税務調査を許さないよう、国税とやり合う姿勢が
税務調査では必要になるのだ。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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