2015/06/01 9:15 AM NEWS

企業の節税策に報告義務

企業の節税策に報告義務

税理士にとって、非常に衝撃的なニュースが日経新聞
に掲載された。facebook上でも、大きな話題になっている。
識者からの主な指摘事項は、下記のとおり。

1 節税策とは何を意味するか?
2 中小企業についても適用対象となるか?
3 罰金が設けられるようだが、租税法律主義から問題はないか?

これらの疑問、今後明らかにされていくと考えられるが、
ひとついえることは、

OECDの肝いり

である以上、近い将来実現することは確実視される、
ということだ。税理士としては、法制化されてすぐに
対応できるよう準備しておくべきだろう。

話を戻して、先の疑問に対する現状の見解を
述べておきたい。


1については、個人的にはむしろ望ましいと
考えている。節税と租税回避、そして脱税の
違いについては、金子宏教授の見解が通説と
なっているが、いざ実務に置き換えると
国税との見解の相違が大きい。

この点、行為計算否認などというわけの
わからない制度もあるところ、節税策を
届け出ろ、というのであればいやでも定義
規定を置かざるを得ない。この定義に即して、
意義ある解釈が導かれる可能性がある、
と考えている。

2については、中小には個人的には
適用がないと思っている。OECDが対象
としているのはBEPSであり、ダブルアイリッシュ
・ダッチサンドウィッチなど、知っていても
使えない中小を対象にすることは難しいと
思うからだ。

この点、保険を活用した節税も対象に
なるのでは、という見方もあるが、大企業は
別途、中小は税務調査で十分に対応できる
ので、個人的にはないと考えている。

もちろん、改正法を見るまでは
安心できないが。

3については、節税=合法とあるところ、
何故届け出るのか、そして何故罰金もある
のか、と否定的な声も大きい。

ただし、罰金は届出をしなかったものに
対するもののようだから、租税法律主義に
規定する「あらたに租税を課し、又は現行の
租税を変更する」にはあたらないと判断すべきかと考える。

日本国憲法84条
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、
法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

いずれにしても、OECDの肝いりであれば、
憲法違反を問うことは難しいわけで、
こだわるべき箇所ではないかもしれない。

日々、新しい制度が創設されるのが税の世界。
対応できる税理士だけが生き残れる。税法など
読んだこともないOB税理士も幅を利かせる現実
を見ると、本音としては、こういう世界が
望ましいと考えている。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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