2015/06/23 12:27 PM NEWS

租税回避防止の常識と現実

武富士事件の補正意見

において、武富士の租税回避策を「著しい不公平感
を免れない」と批判しつつ「厳格な法解釈が求められる
以上、課税はできない」と判断した元判事の
コメントが記載されている。

「法律なければ課税なし」 須藤・元最高裁判事に聞く

① 法治国家である以上、けしからん課税は不可
② 法逃れを防止するため、民間の知恵を活用する

という、至極まともな意見が掲載されている。

この元判事に限らず、多くの学者が同様の意見を
持っているのに、それが実現できないという
国家には、失望感しか残らない。

法律を作る力がない主税局、権力争いに
終始する政治家、誤った租税正義を正しいと
考えてしまう国税組織と、常識が常識で
なくなる税の世界をどう考えればいいの
だろうか。

確たる答えは難しいが、一つ言えることは、

国が思うほど、民間企業は税逃れを
考えているわけではない

ということだ。


以前、税制の研究所に勤務していた際、
政策提案の一環として、BIG4と言われる
大事務所の税理士から意見をもらったことが
ある。

国税組織にいると、このような大事務所の
税理士は、

租税回避を考えるズルイ税理士

という印象がある。このように、指導されて
来たからだ。

主税局など、法律を作るサイドも同じような
意見を持っていると思うが、それは誤り。むしろ、
これらの税理士はよく勉強しているからこそ、

安易な租税回避を防止するための
制度の必要性

を十分に理解している。このため、以前の職場で
伺った意見は、非常に建設的なものが多かった。

元判事の意見の中で、「民間企業で何千万円もの給料を
もらっているようなトップクラスの人材を国の仕事に
引っ張ってくるのには、それなりの工夫が必要で、
コストもかかる」とあるが、個人的にはパブリックコメント
を活用すれば十分に低コストで対応が可能と思われる。

金融法案のように、税法案を事前に公開して、
広く意見をもらえばいい。飯の種に直結するので、
無視するということは基本的にはないだろう。

この点、非常に簡単なことと思うが、何故か
できない。パブリックコメントをやるとすれば、
税の抜け道を作るような意見にだまされたり、
増税法案に対する反発が強すぎると考えて
いるのかも知れない。

このあたり、その是非は最終的には
行政が判断するため、相応の知識と正義感が
あれば十分に対応できるはず、と思う。

両方ともに十分でないのが主税局や国税、そして
政治家である、といわざるを得ないのが
残念なところではあるが....



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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