2015/06/29 9:40 AM NEWS

判決等の意義

期間制限に係る判決等の意義

地方税の話であるが、先日、最高裁で個人住民税に係る
賦課決定処分の除斥期間が問題となった事例があった。

本件で問題になったのは、下記の条文(平成23年度
改正前)。

地方税法第17条の5(更正、決定等の期間制限)1項
更正、決定又は賦課決定は、法定納期限~の翌日から起算
して3年を経過した日以後においては、することができない。
加算金の決定をすることができる期間についても、また同様とする。

地方税法第17条の6(更正、決定等の期間制限の特例)
道府県民税若しくは市町村民税の所得割~に係る更正、決定又は
賦課決定で次の各号に掲げる場合においてするものは、当該各号に
掲げる日の翌日から起算して2年を経過する日が、前条~の規定に
より更正、決定又は賦課決定をすることができる期間の満了する日
後に到来するときは、前条~にかかわらず、当該各号に掲げる日の
翌日から起算して2年間においても、することができる。
三 所得税~に係る不服申立て又は訴えについての決定、裁決又は判決
~があつた場合~ 当該裁決等があつた日

報道によると、所得税の更正⇒審査請求(一部取消し)⇒
裁判(棄却)と行った納税者に対し、その裁判の棄却決定を
受けた日の翌日から起算すると賦課決定が可能になるが、
審査請求の裁決ベースで考えると、2年超になり除斥期間に
かかる、という結論になるようだ。

この規定の趣旨は、調べるまでもなく、裁判等で所得金額が
動いた場合、地方税も変動させるべきだから特例を認めた、
と解される。

事実最高裁も、以下のとおり判断している模様。


「所得税に係る不服申立て又は訴えの決定・裁決・判決があった場合」
とは,“所得税の課税標準に異動を生じさせ,その異動した結果に従って
個人住民税の所得割を増減させる賦課決定をすべき必要を生じさせる
決定・裁決・判決があった場合”をいうものと解される

このため、裁判で棄却されていれば、所得税の課税標準は
動かないから関係ない、と結論付けて納税者が勝訴した
模様だ。

常識的な判断と思うが、地裁や高裁では納税者が負けている
ようだ。判決文が見れないので、負けた理由は分からない
ものの、裁判で負けて所得金額に変更がないのに、
除斥期間が延びる、というのはおかしいことは間違いない。

加えて、地方税の担当者も、今まで何をしていたのか、
といいたくなる。更正処分すれば、当然連絡を
地方に国税は回すわけで、なぜ処理が遅くなるのか
意味不明だ。

支店等がたくさんある法人について、国税の更正の
請求をした場合、クライアントから地方もちゃんと返って
くるんですよね、と相談を受けることがある。

この点、地方に聞くと国税から連絡ありますから
大丈夫です、と言われるが、こういう判決が
問題になると、果たして地方は国税に応じて
処理してくれるのか疑問が残る。

ただでさえ、地方は税を知らない役人を
税務担当にするため、不祥事が続発している。

馬鹿につける薬はないというが、馬鹿ではない
不知なる者に対しては、薬以前の問題だ。



ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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