2015/11/07 9:40 AM NEWS

行政不服審査法が変わる

28年4月より行政不服審査法の改正が施行

かなり大きな改正と言われているが、
現状あまりそのインパクトは感じられない。
「異議申立て」が「再調査の請求」に代わるなど、
むしろ躊躇する印象を与える、と指摘する人も
いるのがこの改正。

とはいえ、よく読むと非常に大きな改正で、
以下の3本の柱からなる改正である。

1 不服申立ての簡易迅速性を生かす
2 公正性をより確保する
3 より利用しやすい制度とする

それぞれの柱に沿ってみていくと、
以下のような整理ができる。

1 証拠書類の閲覧・謄写(通法97の3)etc
2 審理手続の計画的遂行(通法97の2)etc
3 審査請求への一本化(通法75)
    不服申立て期間の延長(通法77)etc

手続き上、特に大きいと思われるのが、
閲覧・謄写と審査請求への一本化であろう。


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2015/10/31 10:03 AM NEWS

調査の違法性と承継

税務調査の違法性は原則課税処分に影響しない

違法性の承継という議題が、行政法では問題になる。
先行する行政処分の違法性が、後続する行政処分に
引き継がれるか、という話。

原則として、先行行為の違法は後続行為に承継されない
とされており、よほど酷な結果があれば、例外的な判断も
なされる、といった整理を個人的にはしている。
税務調査では、税務調査の違法性が更正処分などに
影響するか、これが問題になるわけだ。

威圧誘導などという、違法極まりない川崎汽船事件についても、
税務調査の違法性は引き継がれない、と判断している。
違法性を引き継がれれば、法律も知らない素人集団である
国税職員としては、税務調査ができないという本音を
くみ取ったかもしれないが。

このような整理の延長かどうなのか、先の裁決事例で
以下のような判断がなされている。

平成27年3月26日裁決
更正に基づき過少申告加算税の賦課決定処分が行われた場合
及び決定に基づき無申告加算税の賦課決定処分が行われた場合
においては、当該更正及び決定は「調査により」行わなければ
ならないことから、仮に、調査手続に重大な違法があり調査が
無いに等しいと評価された場合には、更正及び決定の取消事由
となり、それらに基づき行われた賦課決定処分も取り消されることとなる。
他方、修正申告及び期限後申告は、税務署長の調査の有無にかかわらず、
納税者が自己の意思により行うものであって、更正や決定と異なり、
調査が要件になっているものではない。したがって、修正申告又は
期限後申告が課税庁の調査を受けてなされた場合であっても、
当該調査の手続上の違法があることのみを理由に、その申告が無効に
なることはなく、当該申告に基づき行われた過少申告加算税又は
無申告加算税の賦課決定処分が取り消されることもないと解すべきである。

一見すると、調査の違法性は承継されませんよ、と言っているが、
更正決定と修正申告等を分けていることに注目したい。


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2015/10/24 9:55 AM NEWS

第二次納税義務の全部取消し

著しい低額の譲渡であり、譲受者に利益を与えた

こんな理屈でなされた第二次納税義務に基づく
納付告知処分が全部取消しとなった事案がある。
福岡地裁平成27年6月16日判決だ。

第二次納税義務というとんでもない制度が国税徴収法には
存在する。滞納者の財産に滞納処分しても全額回収が
できない場合、所定の関係にある者に納税義務の履行を
求め得る、という制度だ。

この制度、いろいろと成立要件を定めているが、
今回問題になったのが下記の規定。

国税徴収法39(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)
滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足する
と認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の
法定納期限の一年前の日以後に、滞納者がその財産につき行つた政令で定める
無償又は著しく低い額の対価による譲渡~に基因すると認められるときは、
これらの処分により権利を取得し、又は義務を免かれた者は、これらの
処分により受けた利益が現に存する限度~において、その滞納に係る国税の
第二次納税義務を負う。

簡単に言えば、低廉譲渡で利益を受けた譲受人について、
その低廉譲渡によって徴収不足が発生したと認められれば、
納税義務の履行を求めます、という制度である。

この点、本件でも触れられているが、以下の要件が
必要になる。

1 著しく低い対価の譲渡があったこと
2 低廉譲渡と徴収不足に因果関係(基因性)があること
3 徴収不足とされた状態の解消(基因関係の遮断)がない
こと

判決要旨は以下の通り。

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2015/10/17 9:30 AM NEWS

2年おいておけば無効になる?

自販機スキームの対策案は脆弱

平成22年度改正で、自販機スキームの対策がなされたが、
その対策案は非常に脆弱である。その理由は、二年おいておけば
規定が空振る、という信じがたい現実があるからだ。

消費税法9条(小規模事業者に係る納税義務の免除)7項
~第四項の規定による届出書(注:課税事業者選択届出書)を
提出した事業者は、同項に規定する翌課税期間(注:選択届出書の
効力が発生する期間)の初日から同日以後二年を経過する日までの
間に開始した各課税期間~中に国内において調整対象固定資産の
課税仕入れ~を行つた場合~には~第四項の規定の適用を受けること
をやめようとする旨を記載した届出書を提出することができない
(後略)

効力発生から二年内に課税仕入れした場合に適用、とあるため、
二年無稼働でおいておけば、自販機スキームは可能と結論
付けられる。これでは、意味がないと思うのだが、国税は
どう考えているのだろうか?

私も、この点よく質問を受けるが、慎重に対応した方が
いいのではないか、と回答している。裁判で勝つか負けるか
といった問題は置いておいて、国税としては極めて面白く
ないし、何より増税が既定路線の中、こんな税逃れが
できますよとなれば、国民に合わせる顔はないからだ。

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2015/10/12 9:36 AM NEWS

少人数私募債と税制改正

少人数私募債の節税が不可能になる

平成25年度改正で打ち出された本件の適用時期が迫っている。
少人数私募債の利子は、平成28年1月1日以後支払いを受ける
ものから、源泉分離課税から総合課税になる。

従来、少人数私募債は節税の手法として広く使われていた。
源泉分離課税のため、金額を問わず税率は20%となるからだ。
法人税減税の必要性から、所得税の増税が必要になるため
実現したのが本改正。

改正としては、仕方がないと判断できるが、正しくないのは
そのやり方。ご存知の方も多いと思うが、25年度改正では
平成28年1月1日以後発行するもの、に適用するとしており、
26年度改正においては、平成28年1月1日以後支払いを
受けるもの、と後出しじゃんけん的に適用関係を変えた、
という経緯がある。

25年度改正時、発行ベースだから今のうちに発行せよ、
と広く言われたもの。発行した会社も少なくはないと
思うが、それを1年で変えるというあり得ない改正が
なされている。

遡及立法だろ、と言いたくなる内容だった。

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ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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