カテゴリーアーカイブ : NEWS

2014/10/14 10:00 AM NEWS

帝国ホテルの重加算税事案

帝国ホテル所得隠し1億3400万円

 
先日の報道を見ると、どうやらいわゆる「期ずらし」事案の
模様。工事担当者が、予算消化のため、真実の工事完了日を
偽り、平成25年3月期の経費としたことが重加算税対象と
された模様である。

この点、おかしなことをやったものだ、と簡単に解決して
いいわけではない。重加算税を考える上で、その要件につき
非常に重要なポイントがここにはあるからだ。

というのも、工事担当者は予算消化のために工作を
行ったのであり、税金をごまかそうとしているわけではない。
となれば、当局の言う悪質さとは違う悪質さがここには
あると思われる。

この点、まずは条文を見てみよう。

国税通則法68条(重加算税)

第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合
(同条第五項の規定の適用がある場合を除く。)において、
納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎と
なるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、
又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、
当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の
額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき
事実で隠ぺいし、又は仮装されていないものに基づくことが明らか
であるものがあるときは、当該隠ぺいし、又は仮装されていない事実に
基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した
税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に
百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

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2014/10/06 10:00 AM NEWS

過大役員給与は事業年度ベースか

役員報酬の減額と役員賞与の増額

 
よく質問を受けることなのだが、社会保険料の削減の意味を
兼ねて、月額ベースの役員報酬を減らし、事前確定届出給与の
適用がある役員賞与を大きくする、という節約術が
広く知られている。

この点、専門誌でも問題提起されていたが、役員賞与のみを
取り上げて「過大役員給与」となるか、もしくは事業年度
全体の役員給与の支給額で判断するのか、疑問も大きいところ
である。

従来、月100万円を12回払いしていた会社が、社会保険料の
削減のため、月8万円で残りの1,104万円を賞与で貰うことを
考えてみよう。事業年度ベースで見ると支給額は変わらないが、
おかしいことには変わりがない。このため、本当に事業年度
ベースでいいのか、疑問が生ずるわけだ。

法令を読むと、以下の定めがある。

法人税法34条(役員給与の損金不算入)2項
内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の
規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な
部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の
各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

法人税法施行令70条(過大な役員給与の額)1項
法第三十四条第二項 (役員給与の損金不算入)に規定する
政令で定める金額は、次に掲げる金額の合計額とする。
一  次に掲げる金額のうちいずれか多い金額
 イ 内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与~の額~が、
  当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の
  支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が
  類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に
  対する対価として相当であると認められる金額を超える場合における
  その超える部分の金額(以下略)
 ロ 省略
二 省略


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2014/09/30 3:43 PM NEWS

固定資産税は台帳課税主義か?

事後的登記も固定資産税納税義務

 
先般行われた最高裁判決で、このような判断が示された模様。
前年12月に住宅を新築し、10月になってから登記した者に
対する課税が問題になったもので、地裁(自治体勝訴)、
高裁(納税者勝訴)、最高裁(自治体勝訴)と判断が
大きく分かれた模様だ。

この点、条文上には以下の定めがある。

地方税法343条(固定資産税の納税義務者等)
   固定資産税は、固定資産の所有者(質権又は百年より永い
  存続期間の定めのある地上権の 目的である土地については、
  その質権者又は地上権者とする。以下固定資産税について同様と
  する。)に課する。
2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充
 課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者(区分所有に係る家屋に
 ついては、当該家屋に係る建物の区分所有等に関する法律第二条第二項
 の区分所有者とする。以下固定資産税について同様とする。)として
 登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として
 登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき、
 若しくは所有者として登記又は登録されている法人が同日前に消滅
 しているとき、又は所有者として登記されている第三百四十八条
 第一項の者が同日前に所有者でなくなつているときは、同日に
 おいて当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。
3 第一項の所有者とは、償却資産については、償却資産課税台帳に
 所有者として登録されている者をいう。

いわゆる、台帳課税主義と言われる制度で、所有者として登録されている
者が納税義務者たる「所有者」となるわけだ。

そう考えると、最高裁や地裁の判断に疑問符がつくことは言うまでも
ない。


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2014/09/22 5:25 PM NEWS

デンソーの課税事案

デンソー追徴取り消し 

 
タックスヘイブン課税が問題になったのだが、報道によると、
12億円程度取り消されたとある。判決内容は公開を
当事者がさし止めているようで、詳細は分からないが、
タインズで「デンソー」と検索すると、タックスヘイブン税制
に係る事例が出てきたので、おそらくこれと思われる。

タインズによると、以下のような事実関係がある。

① 某国に設立した子会社
② 財務業務を始め、物流サービスを他の子会社へ提供
③ 従業員は②に従事しているが、株式の配当等の収入が70%超

とあった場合、主たる事業は株式保有業であり、
適用除外の対象外に当たる、と当局は認定した模様である。

これについて、「社員が70人ほどおり、物流と財務の
統括機能がある」などと主張してきたのが当社であるが、
この度名古屋地裁でその主張が認められた模様だ。


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2014/09/16 6:32 PM NEWS

適格でない理由は何か?

塩野義製薬に400億円申告漏れ指摘

 
このニュースを日経新聞などで読むが、なかなか意味が分からない。外国子会社に
JVの事業を現物出資したことが適格でないとされたようだが、なぜ適格に
ならないのか、その根拠が不明なのだ。

事案の概要を見ると、

① 英国会社とケイマン?でJV(研究開発絡みの模様)
② その英国会社から、JVの持分を売り渡すよう要請
③ 100%の英国子会社に持分を現物出資
④ 英国子会社が英国会社に譲渡し、キャピタルゲインが実現

という流れ。言うまでもなく、③は国内であれば原則適格になるが、
外国法人へ現物出資する場合、所定の国内資産の現物出資は100%関係が
あっても非適格になる。

その資産は、下記の通り定められている。

法人税法施行令4条の3(適格組織再編成における株式の保有関係等)9項
法第二条第十二号の十四に規定する国内にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債は、
国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利、鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)
の規定による鉱業権及び採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)の規定による採石権その他
国内にある事業所に属する資産(外国法人の発行済株式等の総数の百分の二十五以上の数の株式を
有する場合におけるその外国法人の株式を除く。)又は負債とし、同条第十二号の十四に規定する
国外にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債は、国外にある事業所に属する資産
(国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利、鉱業法の規定による鉱業権及び採石法
の規定による採石権を除く。)又は負債とする。

ご覧いただくと分かるが、25%以上の外国株式を外国法人に現物出資
しても適格になるわけで、こうなるとその背景が見えてこないのだ。


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2014/09/08 10:00 AM NEWS

繰延資産課税の意味と背景

第三銀行が4億円超の申告漏れ

 
報道によると、三重県の第二地銀、第三銀行が名古屋国税局の税務調査を受け、
平成25年3月期までの2年間に法人税約4億5千万円の申告漏れを指摘されて
いた模様だ。

見解の相違があるにせよ、修正申告をしたようだが、その論点は繰延資産に該当するか
否かの模様。先の報道では、「預金管理などのシステム導入をめぐり、支払った委託料の
一部が費用と認められず、ノウハウの提供などに絡む一時金が含まれ」ていたとのこと。

税法上、ノウハウの一時金は繰延資産となる。根拠は、下記の通り。

法人税基本通達8-1-6(ノーハウの頭金等)

ノーハウの設定契約に際して支出する一時金又は頭金の費用は、令第14条第1項第6号ハ
《役務の提供を受けるための権利金等》に規定する繰延資産に該当する。ただし、
ノーハウの設定契約において、頭金の全部又は一部を使用料に充当する旨の定めがある場合
又は頭金の支払いにより一定期間は使用料を支払わない旨の定めがある場合には、当該頭金の
額のうちその使用料に充当される部分の金額又はその支払わないこととなる使用料の額に
相当する部分の金額は、これを繰延資産としないで前払費用として処理することができる。

これだけ見ると、当局の指摘が正しいように思えるが、敢えて法令に立ち返って考えてみよう。 (さらに…)



2014/09/01 9:58 AM NEWS

「不当」は結果か目的か

行為計算否認の適用範囲は結果で見るべき

 
件のIBM判決の解説として、連結納税等の立案者の見解が某税務雑誌に
掲載されていたので読んでみた。問題となった行為計算否認につき、
その適用は税負担が不当に減少したという「結果」で考えるべき、
と解説されている。このため、多数派の「租税回避目的」の有無、
ということに関して、それは解釈の誤りであるかのような指摘が
なされている。

私自身の理解力の問題が大きいと思うが、この指摘がイマイチ
ピンと来ない。条文を読んでみると、確かに「結果」という
用語は出てくるのだが....

法人税法132条(同族会社等の行為又は計算の否認)
税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、
その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる
結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の
認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法
人税の額を計算することができる。
一 内国法人である同族会社
二 省略


(さらに…)



2014/08/25 8:38 PM NEWS

評価損の計上有無

森トラスト、400億円の申告漏れ 

 
不動産の評価損の絡みで、森トラストが更正処分を受けたという
報道がなされた。審査請求により是非を問う模様。


報道によると、

1 不動産投資会社と共同出資した不動産
2 不動産投資会社の上場廃止に伴う評価損計上
3 跡地を売却しようとした形跡がなく、販売目的の所有とは
  認められないとして当局否認

とある。これだけではよく分からないが、
個人的にはなかなか勝つのは難しいように思われる。


評価損の条文には以下の規定がある。

法人税法33条(資産の評価損の損金不算入等)2項
内国法人の有する資産につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額が
その帳簿価額を下回ることとなつたことその他の政令で定める事実が生じた場合において、
その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、
その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えを
した日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、
前項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、
損金の額に算入する。

ご覧いただくと分かる通り、評価損の要件として、

1 評価が下がった因果関係
2 その因果関係として、政令で定める事由の発

の二つがキーになる。



(さらに…)



2014/08/12 4:31 PM NEWS

KDDIの異議申立てと耐用年数省令の解釈

KDDIが異議申立て

こんなニュースが報道されている。内容を見ると、耐用年数に関する
事実認定の相違が原因であるようだ。

携帯電話のサービス提供のため全国各地に設置している鉄塔について、
毎日新聞の報道によれば、
KDDI→「電気通信事業用」(耐用年数21年)
当局  →「放送または無線通信用」(耐用年数40年?)
という解釈の相違が生じた模様。
この点、あてはめの指針としては、以下の通達によることになる。
耐用年数省令1-3-1(構築物の耐用年数の適用)
構築物については、まず、その用途により判定し、用途の特掲されていない
構築物については、その構造の異なるごとに判定する。

まず用途、というわけだが、本件においては言うまでもなく「電気通信」と
「無線通信」の差を考えればいいことになる。
この点、参考になるのは、電気通信事業法電波法である。
 (さらに…)



2014/07/31 10:00 AM NEWS

今からセミナー

税務調査士認定講座第二期

 
第一期に引き続き、OB税理士枠として、登壇させていただくことに
なった。今回のテーマは、法律の使い方である。詳細は
コチラをご覧ください。

http://www.nikkeizei.co.jp/tp_i-tokusetu/

本ブログでも申し上げていることだが、税務署の調査官は
法律を知らない。法律論で会話するということは、実は外国語で
会話することと同じである。

コミュニケーションを取れないまま、税務署の理屈で
課税されるようにも思うが、このあたり如何に交渉するか、
それをテーマに解説を加えるのが私の仕事である。


(さらに…)




ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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