カテゴリーアーカイブ : NEWS

2016/06/27 9:32 AM NEWS

3億2900万円の賠償の裏側

税理士法人に3億2900万円の賠償命令

税理士業界に大きな衝撃を与えているのがこのニュース。事案の詳細が先日の税のしるべに
掲載されていたが、どうやら論点はDESの債務消滅益のようだ。

簡単にまとめると、以下の通り。

1 代表者借入金の解消のためのDESを税理士法人(被告)が提案
2 DESは平成18年度で時価課税が明確化されたが、税理士法人はそれを失念しており、
債務免除益を計上せずに法人税を申告
3 代表者に相続発生した際、相続税申告を担当した別の税理士の指摘で、債務免除益の計上が
ないことが発覚
4 会社は修正申告し、その損害を税理士法人に賠償請求

失念していた、という非は大きいにせよ、これほどの賠償を求められるとなると、今後の税理士
実務への影響は計り知れない。

相続税対策などで、オリジナリティーのスキームを提案することがあるが、そのこと自体極めて
大きなリスクがあるわけで、セカンドオピニオンなどの対応が必要と考えられる。

ところで、この修正申告であるが、記事を読む限り国税の調査を起因としたことではなく、自主的に
行ったものと思慮される。となると、見方を変えるとこのような修正をしなければ、特に指摘が
なかったのでは?とも思える。

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2016/06/06 9:53 AM NEWS

「別法人を作れば大丈夫」を許してはいけない

別の税理士法人を作った脱法行為

先日の読売新聞に大々的に掲載されていた記事。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20160530-OYT1T50076.html

元国税のOB税理士が代表を務める税理士法人が脱税を行っていたため、
税理士法違反による懲戒処分を逃れるため、その法人を解散し、同名の
別法人を同じスタッフで作ったということ。

税理士法的には、このように別法人を作ると懲戒処分ができなくなると
いうことらしい。あり得ないようであり得る話らしく、税理士会も
懲戒処分ができない、という話をしてくれた。

記事には、この税理士法人の名前も含めて詳細に書かれていた。
処分がない以上、おいそれと明るみに出る話ではないはずで、
国税がリークしたのだろう。

国税としては、

法律では処分できないから、悪質な行為をやった税理士法人
として、社会的に抹殺を図る

こんな意図があるのではないか、と考えている。


ここで問題提起したいのが二つある。
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2016/05/23 9:36 AM NEWS

税務署から連絡がないのはなぜか?

調査が終わったのに連絡がない

調査件数が減っているなどと問題視しておきながら、全くもって
矛盾するのだが、実地調査が終わっても、調査結果の発表は非常に
遅いことが通例である。
以前立ち会った税務調査、実地調査がなされたのが8月末。
結果説明があったのが、12月中旬。

4月近く待たされているのに、指摘内容は従来と変わらず、
すいません、今日が締めなので
至急修正申告を準備してください
などと、税理士に言われても、会社に許可を取る必要もあるので、
到底無理な話。しかし、空気の読めない税務署の担当者は、
このような指導をすることが多い。
12月なので、まだ許せる話。

ひどいと、年明けに行われる税務調査については、異動時期である
7月の直前まで、連絡がないことも珍しくはない。

引継ぎはよほどのことがない限りやりたくないので、調査官ももう少し
頭を使って調査を終わらせるべき、と思うところ。
この点、実は私の現職時代(平成15~19年)からも、
結果の発表が遅いことは通例だった。現在ほどひどくはない、
というだけで。
連絡が遅くなる理由は

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2016/04/18 9:17 AM NEWS

固定資産税の評価方法が変わる?

建物の課税評価を取得価格方式にする

先日の日経新聞にこんな記事が掲載されていた。固定資産税は税でも極めてブラック
ボックスな部分があり、恥ずかしながらよく分かっていない。

現状の取扱いでは、再建築価格方式と言われる方式で計算されているとのこと。
これは、鉄筋や木材など使用資材の価格を1点ずつ積み上げる方式とのことで、
よくもまあこんな面倒くさいことをやっていたな、と痛感させられる。

この方式によると、「正確な時価が算定される」と説明されているが、果たして
そうなのかは大いに疑問。不動産の価値は、建物の資材だけでは決まらないはずで、
となれば評価に時間はかかる割に実態に即していないと言えよう。事実、
建物の固定資産税評価額は、時価の3~4割くらいしかない、という話も
聞いたことがある。

検討されている取得価格方式は、個人が申告した取得価格をベースに評価する
方式とのこと。紙面からは読み取れなかったが、現行の減価償却をベースに
やるという方法だろう。個別事情をくみ取れないとか、時価とかい離するとか
の話もあるが、執行の可能性を踏まえれば、原則として問題ないはずだ。

法人税などでは、建物について、未償却残高=時価、などと言っているわけで、
時価の算定に影響はあるにせよ、国税としてもやりやすい話だからこそ、このような
取扱いを容認していると考えられる。

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2016/04/04 9:18 AM NEWS

匿名組合の課税関係

匿名組合は原則として雑所得

現職時代、よくTKという言葉に注意しろと言われていた。TK
とは匿名組合のことで、匿名組合が絡むと租税回避が想定される
ことから、このように言われていたわけだ。

匿名組合については、国税との長い闘いの歴史がある。この点、
見直しがなされたのは平成17年度改正。

平成17年度改正では、

所得税の通達⇒原則として雑所得と明示
租税特別措置法⇒損益通算をブロックする

こんな規定が設けられた。


そもそも、匿名組合が課税上問題になるのは、それが
法人課税がなされない事業体であるからだ。

このため、外国人が匿名組合を使って事業をやり、その
分配金を国外に逃がす、といった租税回避が行われて
いた。


このようなやり方はけしからん、ということでさまざまな
ブロックをかけてきたのが現行法。しかし、ここには、
租税回避は否認するが、匿名組合を使ってビジネスをする
こと事態は禁止しない、といった制度の利用を後押しする
考え方がない。

ひとえに、匿名組合などの、いわゆるパススルー事業体に
ついて、合理的な課税制度を作れないからだ。


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2016/03/17 12:23 PM NEWS

行為計算否認の考え方

行為計算否認は法律を作る側を想定する

税には、行為計算否認規定という強硬的な制度がある。
ごく簡単に言えば、法律上は問題ない節税でも、行き過ぎ
という場合には税務署の権限で否認できるという規定。

簡単に言うとこうなるが、実務はそうは回らない。何を以て
行き過ぎた節税になるのか、不明確極まりない。


こういうわけで、学者が判例を見ながらいろいろと指摘しているけど、
根本的な部分は分からない。根本的な部分が分からないから、
どのような場合に否認されるのか、理解できない。

そもそも、この規定は行き過ぎた節税を否認する、という理解は
正確ではないと考えている。重要なことは、そのような節税を、
法律を作る側が想定していたかどうかである。
想定できるような課税逃れについては、きちんと法律に書く。
寄附金課税や移転価格税制はその典型だろう。

一方で、想定できなかった課税逃れについては、それを許せるか
どうか、社会常識に照らして判断することになる。

ここで重要な基準は、以下の二つ。

1 当然に想定できるものかどうか
2 法律に書くことができるかどうか

1について。想定できる課税逃れについて法律に書いていない。
これは国の怠慢であり、納税者に非はない。

例えば、法人税ではないけど事業者免税点。二年前の売上が
1千万円以下なら消費税がかからない。こんな法律があれば、

二年で別会社を作る
免税となる会社に外注費を払い、節税する

こんなことは誰でも思いつくこと。それがまずいなら、
きちんと条文に書くべきだ。

2について。法律を書く場合、複雑な取引を防止するための
条文は非常に書きにくい。複雑な取引であるため、それを
否認するための要件もたくさん書かなければならないからだ。

こうなると、条文の文字数が膨大になるし、否認規定が適用
されないか、逐一確認しながら処理する必要があるため納税者
も困ることになる。


一方で、シンプルな取引を防止するための条文は書きやすい。
時価で取引しなければならないとか、役員報酬を払いすぎては
いけないとか、こういうものは簡単に条文に書ける。


つまり、条文を書く側の気持ちになって課税逃れを考えると
いうこと。この気持ちを判断するのは、法律ができた趣旨を
見るよりほかにない。








2016/02/08 10:07 AM NEWS

理由附記と地方税

国税がぼろ負けの理由附記

近年、国税が理由附記で敗訴することが
非常に多いという印象がある。その典型例は、
朝日新聞にも掲載された、以下の事例だろう。
-------------------------
平成26年11月18日裁決(F0-3-398)
本件各更正通知書の「処分の理由」欄の記載からは、
本件相続開始日における債務弁済責任に基づく債務が
現に存しないと原処分庁が判断した理由が、例えば、
1本件合資会社に14億0181万6220円の債務
超過額が存しない、2本件被相続人が無限責任社員でない、
3本件合資会社の債務超過額はおよそ無限責任社員である
被相続人の債務ではない、4本件合資会社の債務超過額は
無限責任社員の債務ではあるものの、本件においては、
会社法第581条第1項に該当する社員の抗弁の事実があり、
無限責任社員の債務として認められるための要件を満たして
いない、5そもそも、会社法第580条第1項は、債務を
弁済する責任を規定しているにすぎないという法律的な見解を
前提として、会社債権者からの弁済請求を受けていない以上、
本件被相続人は本件債務弁済責任に基づく債務を何ら負って
いないなど、様々な可能性が考えられ、原処分庁による
処分の実際の理由が、これらのどれに当たるのか、あるいは
これら以外の理由なのか、不明であるといわざるを得ない。
-----------
いろいろ理由があって不明確だから取消し。
非常に稚拙な更正処分だったと痛感する。
理由附記は、平成23年度改正で平成25年より
行う処分について義務化されている。
理由附記がスタートする前から、
いたるところで述べていたが、
国税には理由附記を行う力がない
という純然たる事実がある。

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2016/01/12 9:05 AM NEWS

更正も違法になる税務調査の要件

税務調査の違法性は承継されない

本ブログでも紹介したポイントであるが、違法な税務調査が
実施されても、その違法性をもって税務調査の結果として
なされる更正処分に反論することは原則としてできない。
税務調査と更正処分は別物、というのが法律の整理なので
ある。

このため、考えるべきポイントの一つが、税務調査における
国税職員の非礼などの問題を残したまま、税務調査を
終わってはいけないということだ。更正があれば、こんな非礼が
あったから不当な課税処分だ、ということはできない。

同様に、裁判や不服申立てで争うから、と安易に決定しても
行けない。税務調査の違法性は、更正処分の前であれば
国税職員も申し訳なさがあり、考慮してもらえる可能性が
ある。

ところで、税務雑誌の解説によると、以下の二つの要件
を満たす場合には、上記の例外が認められ、税務調査の
違法性をもって、更正処分の取消しを争うことが可能
と解説されている。

1 処分の基礎となる調査を全く欠く場合
2 調査を全く欠くに等しい証拠収集手続き

この要件は、先日の裁決で明確にされたものである。

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2015/12/14 10:00 AM NEWS

法法132の2の否認事例

注目を集める組織再編成の

行為計算否認

税務雑誌によると、裁決事例で新しい適用事例が
あったようだ。組織再編成の行為計算否認(法法
132の2)については、経済的合理性だけでなく、
法の趣旨まで考えろ、という納税者にとってかなり
酷な判断が出たのは記憶に新しい。

この裁決事例(平成27年2月2日裁決)、TAINS
にはまだ未収録だが、スキームを見る限りシンプルな
ものであるし、資金を親に還流するという目的も
個人的には合理性があると思うため、問題はないと
思ったが、かなり厳しい判断がなされている。

要旨は以下の通りのようだ。


(さらに…)



2015/12/07 9:54 AM NEWS

自己創設のれんの不思議

自己創設のれんを計上するか

古くて新しい論点の一つとして、よく言われる問題がこちら。
自己創設のれんとは、いわゆる営業権の話であるが、このような
営業権、有償取得でない限り認識することがないというのが
税務会計の常識である。

となれば、自己創設のれんなど普通は問題にならない。
これが問題になるのは、連結納税などの際に子会社の
時価評価が必要になるからである。

時価評価の対象となる資産に、固定資産は含まれる。
固定資産に営業権は含まれる。となれば、自己の超過収益力
である営業権を、連結に加入する際の時価評価として
認識すべきではないか、こんな議論がよくある。

この点、立案者や学者は認識することが大前提、
という言い方をすることが多く、国税も認識する必要が
あると説明している模様である。

http://www.lotus21.co.jp/data/news/1107/news110711_02.html

認識するならするできちんとしたルールを作って
くれればいいのだが、

評価も分からない
認識が前提ということを、国税庁のホームページなどで
唄わない

このため、どうすべきなのか、現場では非常に
困っているのである。

(さらに…)




ABOUT ME

松嶋洋 税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中
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