カテゴリーアーカイブ : NEWS
2015/06/23 12:27 PM NEWS
租税回避防止の常識と現実
武富士事件の補正意見
において、武富士の租税回避策を「著しい不公平感 を免れない」と批判しつつ「厳格な法解釈が求められる 以上、課税はできない」と判断した元判事の コメントが記載されている。 「法律なければ課税なし」 須藤・元最高裁判事に聞く ① 法治国家である以上、けしからん課税は不可 ② 法逃れを防止するため、民間の知恵を活用する という、至極まともな意見が掲載されている。 この元判事に限らず、多くの学者が同様の意見を 持っているのに、それが実現できないという 国家には、失望感しか残らない。 法律を作る力がない主税局、権力争いに 終始する政治家、誤った租税正義を正しいと 考えてしまう国税組織と、常識が常識で なくなる税の世界をどう考えればいいの だろうか。 確たる答えは難しいが、一つ言えることは、 国が思うほど、民間企業は税逃れを 考えているわけではない ということだ。(さらに…)
2015/06/15 8:41 AM NEWS
電子商取引の改正と遡及立法
電子商取引の消費税改正
平成27年度改正の目玉である本改正につき、 国税がQ&Aを公表している。 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A 内容をざっくりと見たところ、すぐに押さえて 置くべきことのひとつに、インターネットを介して 行う英会話教室の取扱いがある(問2)。 現状、外国からスカイプ英会話等の サービスを受けても課税されないが、今後は 課税されることになる。本件、アプリや コンテンツのダウンロードを想定していたが、 それに留まらず「役務の提供」にあたる 英会話教室というものも課税対象になる わけで、対応が必要になるところ。 この改正、実は非常にとらえどころが 見えない改正でもある。その理由は、時代錯誤 もはなはだしい日本の消費税は、インボイスや 事業者番号がないため、妥協の産物でしか 制度を作れないからだ。 このため、課税売上割合が95%以上の事業者は、 本制度の適用が当分の間ないなど、経過措置で 本制度の本旨を踏みにじる形でとりあえず 法律化した、というのが正直なところだろう。 経過措置は、やろうと思えばすぐにでも廃案とできる ものだから、法律さえ用意しておけば後はどうにでも なる、という立案者の腹積もりが見える。 特に、問題となる経過措置は、本Q&Aの問16だ。(さらに…)
2015/06/08 9:06 AM NEWS
国税組織の限界点
税務訴訟の敗訴が目立つ
ホンダの移転価格課税、そして日本IBMと、 巨額の訴訟で国税が負けるケースが目立っている。 このような時代の流れもあるのだろうか、 日経新聞で下記のような特集が組まれている。 「税制、経済国際化に後れ」 国税負かす女神はこう考える 上記訴訟を手がけた弁護士のコメントが 面白い。アメリカのように、民間と国税の 人材交流をもっと活発化し、そのノウハウを 活かす、といった趣旨のことが書かれてある。 この弁護士は、税務大学校からも講師依頼を 受けているようで、国税のあり方としても 危機感が見える。 民間の知恵を活用する、ということには 大いに賛成であるが、国税組織の閉鎖性は それを許さないはず、というのが正直な ところ。法的知識や法律に則った説明の 必要性がこの特集でも取り上げられているが、 そんな常識的なことすらできないのが 国税組織なのだ。(さらに…)
2015/06/01 9:15 AM NEWS
企業の節税策に報告義務
企業の節税策に報告義務
税理士にとって、非常に衝撃的なニュースが日経新聞
に掲載された。facebook上でも、大きな話題になっている。
識者からの主な指摘事項は、下記のとおり。
1 節税策とは何を意味するか?
2 中小企業についても適用対象となるか?
3 罰金が設けられるようだが、租税法律主義から問題はないか?
これらの疑問、今後明らかにされていくと考えられるが、
ひとついえることは、
OECDの肝いり
である以上、近い将来実現することは確実視される、
ということだ。税理士としては、法制化されてすぐに
対応できるよう準備しておくべきだろう。
話を戻して、先の疑問に対する現状の見解を
述べておきたい。
(さらに…)
2015/05/25 9:15 AM NEWS
寄附金課税される場合の国税の考え方
取引当事者間の真の合意価格を認定する
寄附金課税について、単に時価と対価の差額を確認するのではなく、 このような手法も容認される、といった趣旨の記述が税務雑誌に 見られた。著者はOB税理士なので、国税はこのような課税を 行うということだろう。
真の合意価格を認定する、というが、これは本来合意した金額より も少ない金額で取引した場合、その差額分相手に贈与した、と事実認定 できることもあるからだろう。取引直前になって、値引きすることも あるが、通常の値引きは寄附金課税されないから、取引相手への利益供与、 と評価できる事実が必要になることは間違いない。
この点、国税は極めて安易に事実認定することがあり、往々にして 納税者はやりくるめられてしまうので注意したいところだ。
例えば、過去の裁決例を見ると、特定時点で修正することを予定して いる暫定価格ベースでの取引を期中で行い、決算段階で修正をかけた 取引について、暫定価格が時価であり、修正した価格はそれよりも 低いから、差額は寄附金に当たる、として更正されたものがある。
材料の市況の関係もあるため、暫定価格で取引することは実務でも ありうることと思うので、何故暫定価格が時価になるのかさっぱり 不明だが、このようなおろかな更正処分が行われるのは、ひとえに 「時価の立証」が面倒くさいからに他ならない。(さらに…)
2015/05/18 10:27 AM NEWS
塩野義製薬の異議決定
JV持分の現物出資が非適格
以前、紹介した塩野義製薬の更正事案。予想されたことだが、 異議申立ては却下されたようだ。 ざっくりとだが内容を見ると、信義則違反と 国内資産の現物出資かどうかが問われた模様。 信義則については、事前照会で適格現物出資該当と 指導されるものの、問題となったJVの管理等に つき、事前照会内容とは異なり、国内における 管理と認められる事実関係があるため、 対象外としている。 国内資産該当性に関しては、JVの持分ではなく JVの資産が現物出資の対象資産とされた上で、 国内管理をしているので下記通達に基づき、 外国法人に対する国内資産の現物出資であり、 適格にはならないと結論付けた模様だ。 法人税基本通達1-4-12(国内にある事業所に 属する資産又は負債の判定) 令第4条の3第9項《適格現物出資の要件》に規定する 「国内にある事業所に属する資産又は負債」に該当するか どうかは、原則として、当該資産又は負債が国内にある 事業所又は国外にある事業所のいずれの事業所の帳簿に 記帳されているかにより判定するものとする。 ただし、国外にある事業所の帳簿に記帳されている資産又は 負債であっても、実質的に国内にある事業所において経常的な 管理が行われていたと認められる資産又は負債については、 国内にある事業所に属する資産又は負債に該当することに なるのであるから留意する。(さらに…)
2015/05/11 9:18 AM NEWS
第3のビールに係る酒税
「極ゼロ」酒税返還せず
報道によると、サッポロビールが発泡酒と 判断して自主納付した酒税115億円につき、 発泡酒ではなくやはり第3のビールであった として国税に求めた還付請求が却下された ようだ。 守秘義務の観点から、国税もサッポロビールも 却下理由も、第3のビールに該当する理由も 明らかにしていない。このため、酒税法を読んで みたのだが、いわゆる第3のビールの要件が、 これまたよく分からない。 wikipediaによると、 原料を麦芽以外にする 発泡酒に別のアルコール飲料(大麦、小麦等を問わない麦由来のスピリッツや焼酎)を混ぜる という手法から第三のビールになるということだが、 製造技術に関する知識がないと、そこで躓いてしまう ことになる。事実、手法が関係する話になるため、 本件の核心を国税庁もサッポロビールも明らかに していない。 実際のところ、国税の職員も、酒税については「販売免許」 に関する業務がほとんどであり、重要な酒類の区分については、 鑑定官という技術系の職員が担当している。 技術系の職員は一般の税務職員とは異質の存在であり、 私自身彼らの業務の詳細を知っているわけではない。 このため、なかなかコメントしづらいところなのだが、 ひとつ言えるとすれば、このような解釈しづらく、かつ 抜け道の多い法体系は問題がある、ということになる だろう。(さらに…)
2015/05/01 9:00 AM NEWS
条文の書き方と包括的否認
組織再編税制の租税回避否認
法人税法132の2条に規定される、組織再編成税制に係る包括的 否認規定については、同族会社の行為計算否認規定と異なる とヤフー事件において判断されている。 いろいろな識者の論文を読んでみると、 同族会社の否認⇒経済的合理性基準 組織再編成の否認⇒経済的合理性基準+法の趣旨の濫用 という関係性がある、と指摘されていた。組織再編成税制の 場合、法の趣旨にまで遡り、その趣旨にそぐわない適用が なされればアウト、ということになり、同族会社の 場合には、そこまで見られるとは限らない、こんな 指摘がなされている。 このような指摘が正しいかどうかは別途、条文を見てみよう。 法人税法132条(同族会社等の行為又は計算の否認)1項 税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定を する場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には 法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、 その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に 係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。 法人税法132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認) 税務署長は、~合併等~に係る次に掲げる法人の法人税につき 更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、 これを容認した場合には、~法人税の負担を不当に減少させる 結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算に かかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の 課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。 ごらんいただくと分かるとおり、132条と132条の2の 条文の構造は変わらない。 前例踏襲で条文を作らないと決裁が降りにくいためこうなるのだが、 それでは同族会社と組織再編成で否認されるケースが異なる という事態はなぜ生じるのだろうか? あくまで私見になるのだが、このような結論の背景には、 条文を作る人間の考え方がある。(さらに…)
2015/04/27 9:53 AM NEWS
経済的合理性基準の見直し
高裁でもIBM事件は国の敗訴
ある意味ショッキングなニュースであるが、高裁でも IBM事件は国が負けたようだ。地裁でも完膚なきに まで叩きのめされているので、あらかた予想された結果、 といえばそうなのだが、税務雑誌によると、高裁判決では、 「経済的合理性基準」を否定する判断がなされている、と 指摘されている。 高裁判決を見ていないので、確たることは言えないが、 仮に税務雑誌の指摘どおりであれば、税制の大前提を 覆すものと整理できる。租税回避の否認に当たっては、 原則として「経済的合理性」が問われる、とされて 来たからだ。 包括的租税回避否認規定である、法人税法132条 を再度見てみよう。 税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は 決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、 これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる 結果となると認められるものがあるときは、その行為又は 計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その 法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は 法人税の額を計算することができる。 「行為計算~を容認した場合」の解釈が不明確なので 問題になるのだが、節税をすべからく否認することは 到底許されないところ、行為計算に合理性がないか どうかがファクターにならざるを得ない、と 考えられる。(さらに…)
2015/04/20 9:31 AM NEWS
分掌変更の退職金と未払金
分掌変更の退職金は未払不可
実務で問題になる役員退職金のうち、いわゆる実質的な
退職として経費として認められるものが分掌変更の
退職金。
この退職金については、法人税基本通達において下記の
定めがある。
法人税基本通達9-2-32(役員の分掌変更等の場合の退職給与)
法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し
退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば
次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、
その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、
実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによる
ものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。
(1)~(3) 省略
(注) 本文の「退職給与として支給した給与」には、原則として、
法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。
ご注目いただきたいのは、未払金等は含まれない、ということ。
このため、現金支給できなければ駄目だ、という原則論が
あり、この点判例でも支持されている。
ところが、未払金で経理した分掌変更に伴う役員退職金が
認められた事例があった模様。詳細は伝わっていないが、
資金繰り等の都合のため未払になったものであり、いたし方
ないという判断だったようだ。
先の通達に戻ってみよう。未払金等は駄目、となって
いるが、「原則として」という用語に注目いただきたい。
(さらに…)
税務調査対策専門及び税務訴訟に強い税理士。 16,000部のベストセラー『税務署の裏側』著者。 元税務調査官であり、税制改正セミナー講師を 務めるなど、税法解釈と調査対策を得意とする。 税理士が教えない超簡単な調査対策について、 無料レポート発行中。
@yo_mazs
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